温度差。
温度差。
『サヨナラって……』
慧はまだ事態を把握出来てないみたいで、呆然と呟く。
「今までありがと」
最後にそれだけ言って、ボクは通話を切った。
そして寮に戻るために歩き出す。
最初はゆっくり。
次第に速足で。
最後は走って、駅までの道を進んでいった。
「………っ」
行き先は解るだろうし、車で追ったらすぐに追い付いちゃうんだけど。
それでも、一秒でも早く慧から離れたかった。
「―――――」
だってボクは、きっと今泣いてるだろうから。
慧の部屋でしようと思わなかったのは、はじめは単に彼女との修羅場が面倒だったから。
でも今は、
「…ばかだなぁ、ボク」
慧のベッドでしない事で、自分に釘をさしてた。
「………」
慧のベッドでしたら、きっと自分と彼女を比べちゃうって解ってたから。
自分の本当の気持ちに気付くって、心のどこかでセーブしてたから。
でもどんなにセーブしても、自分の心を騙すなんて無理な事で。
「………ホント、ばかだ」
ずっと気付かない振りしてた。
気付いてしまったらきっと、あなたとボクの温度差に、苦しくて悲しくて、耐えられないだろうから。
「ばか……」
ボクはなんて馬鹿なんだろう。
彼女(ホンメイ)がいるセフレを、本気で好きになるなんて。
[*←back][next→#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!