温度差。
彼女
「や…やだ。慧、いや」
「ヤじゃない ………ホラ、気持ちイイだろ?」
「ん…やぁ」
確かに気持ちいいんだけど、ボクはいやいやと首を振った。
だってここは慧のベッドだから。
慧、覚えてる?
***
「ねぇ、慧の部屋はダメなの?」
まだ知り合ったばっかの頃、ラブホを嫌がる慧に訊いた事がある。
「んー…あいついつ入って来るかわかんねぇしなぁ」
「あー、そっか」
ヤってる最中に彼女が来たら大変な事になるだろうなぁ。
「うん、めんどいのキライ。慧の部屋ですんのはやめよう」
修羅場を想像して面倒くさいと顔をしかめるボクに、「そうして」って慧は笑った。
***
あの日から、ボクは慧の部屋を使おうとは思わなかった。
「ヤダ、慧…や……あ…あ」
ボクは抵抗したけど、慧はやめてくれない。
強くベッドに押し付けて、ボクの動きを封じ込めた。
「いや」
いつ入って来るか解らない彼女も
ボク達がしてる事が隠れてしなきゃいけない事だってコトも
全部ぜんぶ嫌だった。
「慧……」
同じベッドで同じコトをしてるのに、全然違う。
彼女さんは慧のちゃんとした恋人で、
ボクはただのセフレ。
「慧、やめよう……やめて」
慧は何も言わないでボクを抱く。
「やだよぅ…」
その日慧はずっとボクを放さなかった。
何度も何度もされて。
泣いてやめてと頼んでも、ボクの意識がなくなるまで慧はボクを抱き続けた。
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