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温度差。
夜のまち2
  
 つれて行かれた先はホテルだった。

(ここって、ラブホ……?)
 内装を見回してみる。
 普通のホテルとあんまり変わんない?
 ちょっと安っぽい感じはするけど。


「慣れてる?」
「え?」
 ニヤニヤと訊いてくる相手。
「こんなトコまで付いてきて、なにされるかわかってる?」

 やっぱり。

 付いてきてっていうか、強引に連れてきたんじゃん。

(どうしよ)

 どうにかして逃げないと。
 でも頭が回らなくて、体にも力が入らない。

「大丈夫大丈夫。あんま酷くはしないからさ」

 不安たっぷりな言葉を彼は吐いた。
手を振り払って逃げるには、腕を掴む力が強すぎる。

(こういうのって、下手に抵抗したり、刺激したりするのはよくないよね…)
 心臓の音が激しくなってきた。
 緊張で体が硬くなる。

 逃げなきゃ。

 頭の中で何度もそう思うのに、体はちっとも動かせない。

 それどころか、

『いいんじゃない?』

 どこかで別の声がする。

『変に抵抗して酷いことされるより、このまま流されてやっちゃえば?』

どうせ初めてなわけじゃないんだし。
 慧のときだって似たようなものじゃない。って、その声は言ってくる。

(自棄になってるなぁ)

「部屋ついたよ」
 何も言わないボクに肯定と取ったのか、その男の人は腰に手を回して体を密着させてくる。
 そのとき、





「―――え?」
 いきなり後ろから腕を掴まれて、思い切り引っぱられた。

「あ゛!? なんだよ」
 男の人が不機嫌そうにボクの後ろを睨み付ける。視線を追って振り向くと……


「幹也さん?」

 普段の無表情が嘘みたいに、焦った顔。







「――――末宮、君…?」

  

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あきゅろす。
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