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温度差。
好きな人
 

 授業中なだけあって廊下は静か。

(結構痛いかも……)
 ボクはじんじんする指をくわえながらその廊下を歩いてた。
 ぼーっとしてたらカッターで指切っちゃったんだ。

「ひつえーひまーふ」
 そのまま保健室に入る。
「はーい。どうしたの?」
 机に向かっていた先生がこっちを見た。

「……えと…榎原(エノハラ)君、だったよね?」
 ニコッて笑ってくる先生。

(今日も変わらず美人)
 今年臨時で入った保健医なんだけど、凄く美人で生徒に大人気なんだ。

 男の人に使う言葉じゃないかもだけど、華があるっていうか、艶っぽいっていうか……

 そう思った瞬間、この前の事思い出しちゃった。

「どうしたの? 顔赤いけど……熱?」
「あ、いや。ゆっ、指を………」
 かなり動揺しながら切った指を見せる。

 先生は指を診ると、それほど深くないから大丈夫だよ。って言いながら素早く手当てしてく。


「先生」
 綺麗に手当てされた指を見ながら声を掛ける。

「何?」
「ちょっと休憩してってもいい?」
 なんとなくやる気が出なくて、授業に戻らず机に突っ伏す。
「うん? 別に構わないよ」
 先生は特に気にした風でもなく言った。


「飴食べる?」
 道具を片付けて向かいに座った先生が、アメのいっぱい入った缶を差し出してきた。

「保健室にアメなんてあったんだ」
 缶の中を物色しながらそう言うと、
「私物なの。他の先生にはナイショね」
 と可愛らしく唇に指を当てて先生が言った。
「先生のなの? ずいぶんいっぱい持ってるんだね。アメ好きなの?」
「うーん、好きっていうか依存に近いかな。無いと落ち着かなくて」

 タバコ吸ってないとイライラしちゃう人みたいなものかな? と先生は笑いながら一つ手に取る。そしてふと真面目な顔になると、


「あの……さ」
 と切り出してきた。
「? なに?」
「榎原君は、恋人はいる?」


 ―――はい?

「……いない…けど?」
 戸惑いながらそう答えると、そう…、と呟くように先生は言った。

    

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