温度差。 好き 何だかもやっとした気分になって、寝るにはまだ早い時間だったが早々にベッドに潜り込んだ。 (付き合ってるって事は、あいつに告ったって事か?) もしくはあいつから? 目を閉じても、考えるのは幹也のことばかり。 自分でも異常だと思う。誰かにこんなにも執着するなんて。 (……どんな顔して言ったんだろうな) 閉じた瞼の裏に、あいつに告白しようとしている幹也の様子が映る。 どんなふうに? どんな表情で? 『好き』 「―――っ」 好きだと泣いていた幹也の顔を思い出した途端、無意識に飛び起きていた。 あいつのために泣いて、笑って。 それはあいつが幹也にとって特別な存在だから。 だから特別な表情をする。 「――――」 ―――――嫌だ 胸の奥にドス黒い何かがある。 ムカつくとか、面白くないとか、悔しいとか、そんなもんじやなくて。 体の奥の方に重く冷たく沈んでいく『何か』がある。 『いるよ』 不意に優が言っていたことを思い出した。 『オレにだけ笑ってくれればいいのにって思う子』 今ならその気持ちが解る気がする。 優のように、優しげで幸せな想いではないけれど。 「嫌だ」 『何か』がどんどん大きくなっていく。 黒く沈んだそれの名前に至って、息苦しさを感じた。 そうだ、これは――― 嫉妬。 「好き……」 俺は幹也が好きなんだ。 でなければこんな風に思ったりしない。 好きだと告げる相手が、 『どうして俺じゃないんだ』 なんて。 [*←back][next→#] |