温度差。
過去
『だったら何だっていうんです』
そう言って切られたままの携帯を暫く見つめる。
「なんだよそれ……」
幹也はあいつと付き合ってるのか?
「だから別れたいっつったのか?」
それなら突然の別れの理由も合点がいく。
だって幹也は、あいつのことがずっと好きだったんだから。
***
『お前、あいつのこと好きなの?』
『え?』
『あの、……マナト? ってやつ』
まだ出逢ったばかりの頃。
いつもどこか冷めたような感じを受ける幹也が、あいつの前では嬉しそうに穏やかに笑っているのが可笑しくて訊いた。
『―――別に』
訊かれた本人は素っ気なくそれだけ言って窓の外側へ顔を向ける。
『別にって、冷めてんなぁ』
さっきまではあんなに満面の笑みだったのに。
『………………………幹也?』
そっぽを向いたままの幹也の様子がおかしい。
『どうし――オイ?』
『……っるさ…』
覗き込んで見えたのは、目に涙をいっぱいにして泣いている表情だった。
***
学人はダメなんだと幹也は言った。
学人は無理なんだと。
どういう訳で幹也がそう言ったのかは未だに解らない。
でも確かに幹也はあいつが好きで、それなのにあいつを諦めようとしてた。
なのに、
(付き合ってる?)
いつの間に?
「ワケわかんねぇ」
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