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関節を押さえているらしく、振り払おうにも腕が動かない。
「……離せ」
「最初の蹴りも効いてる?」
「な、―――ッ!!」
ダン、と足首に踏み潰すような蹴りを入れられ、あまりの激痛に膝が折れた。今の僕は、後ろの男の腕に全体重を支えられる体勢だった。
「やっぱり」
「手こずらせんなよマジで」
床に倒れていた生徒たちも、次々と起き上がる。
「大人しくしろよ」
後ろの男に背中を蹴られ、今度は顔から床に突っ伏した。直前に外れた眼鏡が、誰かに蹴られ飛ばされていく。眼鏡をつけていたらどうなっていたか、と背筋が粟立った。それをまるで気にしないこいつらは、僕がどうなったとしても構わないだろう。これからの事態を想像し、ぶわりと汗が噴き出した。
「諦めろよ?」
「ぅあッ!」
無防備だった背中を激痛が走った。
何とも言えないような感触。ゴムの底、靴。
踏まれている。
「うわ、そこまでするかよお前」
「苦しんでる顔がエロいだろ」
「お前本当ドSだな!!」
全身が痺れるように痛む。
どこかで神経をやられただろうか、指先一つ動かない。
『こちら上ノ宮。キサキ君? 今どこにいる』
ピピ、と右耳から音がした。
マイクを出さなくては。でも右腕が動かない。
「おい、動かないけど死んでねーよな?」
「大丈夫だって。俺脱がせるから順番決めてろよ」
身体を仰向きにされ、シャツのボタンに指が掛かる。抵抗したくても動けない。
触るな。
「……おい」
「何だこの音?」
ミシ、と何かが軋むような音がした。僕に手を掛けていた生徒の動きが止まり、僕はその視線を辿る。
その先にあった視聴覚室の扉が、金属を擦る音と共に枠から外れた。
「な……」
そのままスローモーションで床に落ちていく。
ズン、と身体に衝撃が走った。
「何をしている」
よく通る声が視聴覚室に響いた。
「げ、美作!?」
「おい逃げるぞ!」
「待てよ! 何でアイツが……」
その声を聞くだけで、五人の生徒たちは反対側の扉から逃げて行ってしまった。美作副会長なのだろうか。首を動かそうとするも肩の筋肉が痛み、うまくいかない。
突如訪れる静寂。
『おい木崎? 返事をしろ』
『キサキ君無事かい?』
眼鏡がないからか、はたまた頭を打たれたからか、徐々に焦点が定まらなくなっていく。身体を起こそうとするが、背中が痛くて起き上がれない。
足音が近づいてくる。
「………美作先輩?」
それ以上意識を保つことが出来ず、僕の目の前は暗くなった。
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