短編/外伝集 苦い昔話 一面の銀世界。 水晶の大陸は、積もった雪と水晶が重なり、宝石のような輝きを放っていた。 「レイズ!こんな所で何やってんの!?」 「何って、決まってんだろ」 ループは、広い空き地で雪だるまを作るレイズを見つけた。 二人は魔術師として、普段は世界中を駆け回っているのだが、今は揃って休暇中だ(魔術師には、年に何度か五日間の休暇がある)。 他の魔術師は揃って家に籠もっていた。 「…どうだっ、見ろ!」 雪だるまが、たった今完成したようだ。自慢げに胸を張る。 ループは呆れたように溜め息を吐くと、「…子供みたい」と呟いた。 「なに言ってんだ。オレ達はまだ子供さ。つーか、大人だって作っていいだろ」 「べっつにいいけどー…」 「…あっ!お前、まだあの時の事根に持ってんな!」 白い目で自分を見るループ。 『雪だるま』と言えば、あの時の─。 そう。あれは、まだ二人が幼かった頃。 レイズとループは、二人で雪だるまを作っていた。 周りに大人は居なかった。 二人は一時間程掛けて、二つの雪だるまを作った。 それは二人の胸程の大きさで、丁寧に作ったのだろう、作りにムラがなくきめ細やかに作られていた。 「これで……出来た!」 「やったやった〜!!」 はしゃぐ幼子二人。 微笑ましい光景である。 …が、その喜びも束の間。 「うわぁっ!?」 「レイズくん!?」 足元の氷で足を滑らせ、レイズはつんのめる。 何とか持ちこたえようとするが、無念、踏ん張りが足りなかった。 「ううぅ……!!」 此処で転んだら、近くに居る彼女を巻き込んでしまうかもしれない。 嫌だ、嫌だ、転びたくない……! バンッ! その時、小さな爆発が、レイズと地面の間で起きた。 どうやら、無意識の内に爆発の魔法を使っていたらしい。 爆発の反動でレイズは軽く尻餅をついた。 …転ばずに済んだ。 バシャアッ!! 間髪入れず、何か水のような物が勢い良く弾ける音がした。 「……あれ?…ループ…ちゃん…?」 「…ひどいよ…レイズくん…」 先程の音は、レイズの魔法によって溶けた氷が、近くに居たループに思い切り掛かった音だった。 レイズの魔法はまだ威力が弱く、氷は溶けたものの、水が蒸発しきれなかったのだ。 「あ、あの…ぼく…えっと…」 どうして彼女がこうなったのか理解出来ずに、うろたえるレイズ。 彼女は頭から爪先までずぶ濡れだ。そうこうしている間に、目に大粒の涙を溜め……。 「ひっく…うわぁあああん!!冷たいよぉ!寒いよぉっ!レイズくんひどいよぉおお!!」 「あ!ループちゃん…な、泣かないで…えっと……お、おとうさぁああん!誰かーっ!!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |