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短編/外伝集
少年の願い


「おかえり。リト、塑羅」
泣き疲れて眠っている塑羅さんを抱えて帰って来た僕を出迎えたのは、カロレスさんだった。
「ただいま帰りました」
何時もは翠さんやスキルちゃん達も出迎えてくれるのに、カロレスさん一人だけなんて珍しいなぁ。
「スキル達は俺が引きとめておいたよ。今の内に塑羅を部屋に連れて行くといい」
そんな僕の疑問を察したのか、カロレスさんは言った。

「あ、ありがとうございます!…でも、どうして」
「何となく、かな?」
そう言って笑うカロレスさん。
本当に何となくなのか、それともわざとおどけて言っているのか、僕には解らなかった。

個人部屋がある二階へ上がる途中、僕は一度だけ振り返って、カロレスさんに聞いてみた。

「…『きっと大丈夫』って、こういうこと…ですか?」
「さあ、俺にはよく解らないな」
カロレスさんはさっきと同じ笑顔のまま答えた。


塑羅さんの部屋に入ると、僕は塑羅さんをすぐさまベッドに寝かせた。
規則正しい寝息、穏やかな寝顔に安堵する。
…さっき言っていたような夢は見ていないみたいだ。良かった。

塑羅さんの髪を撫でる。
──いつの日か、左目を隠さずに、塑羅さんが笑顔で暮らせる日々が来て欲しいと思う。

そのために、僕は彼女を支えたい。

髪を撫でていた手を止め、今度は彼女の手をそっと握った。

──どうか、彼女に優しい夢を。
幸せな日々を。
彼女が笑顔で暮らせる未来を。


──そう願った時、彼女がほんの少しだけ、笑ったような気がした。



END.



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あきゅろす。
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