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tvxq
Rainbow(グラロク)
※現代パロ


Seven colors make much happiness
with you, and me










駅前のカフェの軒下。
雑踏のなかいじっていた携帯のちいさな液晶画面に光る、久しく声を聴いていない名前。



お互い社会人だから、会いたいときに会える訳じゃない。
グラハムが仕事で籠もっているあいだは、おれから連絡はしないのがふたりのルール。
作曲家の彼から言わせると、仕事中に連絡されると「音が逃げる」らしいのだ。
別にそれが不満なわけじゃないけれど、淋しいものはさみしい。



弱くなってきた小雨の空を見つめる。
会いたくて会えないときは、気持ちを誤魔化すためにいつも空に彼の笑顔を思い浮かべる。
…そのたびに、おれって乙女、と自己嫌悪になっていたりするんだけど。



視線を携帯に戻しながら、左手でウォークマンをいじる。
いつものフォルダなら見なくたって選べる。

一通り操作を終えると、流れてくる軽快なリズム。


画面にはアーティスト名はアンノウンと表示されていて、曲名にただ一文字。



「虹」



天才と謳われた作曲家グラハム・エーカー唯一のメディア未発表曲。


世界中で、おれとグラハムしか知らない歌。

どんなに離れてても、ふたりを繋ぐ「虹」










広い世界でdarling
ただひとり
you're listening to my heat
どんなときでも感じてる君を
baby,
How do you feel me?










ふいに周りにいた人びとが笑顔を浮かべて感嘆の声をあげた。
少し驚いてあたりを見回すと、傘を畳んだこどもがはしゃいだ様子で空を見上げている。
つられて首を傾けると、空に架かる七色の橋。





「あ…」





虹を見るのは初めてではないが、夕焼け空に架かった虹を見るのは初めてだ。


急いで携帯を操作して、グラハムの番号を呼び出す。


時が止まった
そんな瞬間を伝えたくて。



仕事中に電話なんかするのははじめてだから、恐る恐るコールする。
余りに聞き慣れた電子音が、ただ鳴り響き、彼の声は一向に運ばれてこない。


7回目のコールで留守電に切り替わった。




「だよ、なぁ…」





当然と言えば当然のこと。
おれが勝手に期待しただけだ。





「…帰ろ」





オレンジと紺が溶け合った空に背を向けて家路を辿る。
虹はもうほとんど消えていた。












あまり高級ではないマンションの7階。

窓の外はすっかり暗くなっていたけれど、誰かに見られるわけではないからあまりカーテンは引かない。
都心から少し離れてるとはいえ、東京の夜景はきれいだ。



まるい月を包んだ夜空を見上げ、また隣が寂しくなる。

愛されていることを知っているからこそ、逢えない距離は遠い。






ふと、耳に届いた「虹」

ガラステーブルのおれの携帯が細かく震える。
普段おれは通常のベル音しか使わないから、きれいな旋律が流れてくる相手なんてひとりしかいない。




少しだけ緊張しながら、使い慣れている機械を操作する。






from:グラハム
Sub:久しぶり

夕方、電話に出られなくて済まなかった。

もうほとんど仕事は片付いたよ。
明日には帰れると思う。


知っているかい?
今日、夕焼け空に虹が架かったんだ。
まさしくきみと私を繋ぐ運命だ。
もう時間も遅いけれど、
これだけ、伝えたくてね。

おやすみ。
‐‐‐‐‐‐‐‐end‐‐‐‐‐‐‐‐‐




添付ファイルを開くと、おれが見たのと同じ虹が電線の間を避けるように写っていた。





「見て、たんだな」





自然と笑みがこぼれ落ちてくる。
同じ感覚を共有できたことが、こんなに嬉しいなんて。





今日は早く寝よう。



ベッドに携帯を投げ、灯りを消す。
ひとりのベッドは広かったけれど、不思議ともう寂しさは消えていた。



明日、きみに会えるんだ。











ふたりをつなぐRainbow 
離れてても 
say I love you





┼┼┼┼┼┼
「Rainbow」:東方神起
3rdアルバム「T」収録曲


ひさびさのグラロクはなかなか難産でした(笑)
そろそろファーストアルバムもやりたいなー

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あきゅろす。
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