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tvxq
どうして君を好きになってしまったんだろう?(メジャー/ゴロトシ)
どうして…
君に何も伝えられなかったんだろう?
毎日毎晩募ってく想い
溢れ出す言葉 解ってたのに
(もう届かない)










潮風がうるさい。

ふたりしかいない海辺で、きみと僕は「親友」の話をしている。

少なくとも、きみは、そう思っているんだろう?





「…え?ごめん、吾郎くん。もう一回、」

「なんだよ、寿。ちゃんと聞いてろっつーの」




お願い。
きみの伝えたい言葉が僕の望まないものなら
どうか




「オレさ、」




言わないで。




「結婚するんだ」




逆光に縁取られた彼の笑顔は、哀しいくらい綺麗だった。
















紛れもなく快晴な空。
未だ主役は姿を見せてはいないが、どことなくそわそわしている招待客の中には、いくつか見知った顔も混じっていた。




「佐藤」

「…薬師寺」




共通の友人の結婚式だというのに、薬師寺の顔は複雑な色を含んでいる。


まぁ、当然か。

彼に伝えられなかった気持ちを知っているのは、僕と薬師寺だけだ。




「佐藤、お前は、」

「いいんだ」

「…佐藤…」

「ほんとに、いいんだよ。ありがとう薬師寺」




今日は僕にも、それから吾郎くんに関わるたくさんの人間にとっても、特別な意味を持っている。

吾郎くんにとって、幸せがあふれ出すような日なんだ。



だから




「正直、悔しいよ」




いちばん近くできみのことを見ていたのは、いつだって僕だったのに。

本当の意味で苦楽を分け合ったのだってだったし、事実彼を支えてきたのは僕だ。

どんなに時が流れたって、きみはずっとここに
僕の隣にいると思ってたのに。





「結局、気持ちは伝えなかったのか?」

「言えるわけ、ないだろ」





本当に嬉しそうだったんだ。


(誰よりも先に、寿に言いたかったんだよ)

(オレ、いま最高に幸せなんだ)

(人生で一番のパートナーなんだよ、あいつは)


僕の入り込む隙なんかないくらい、彼は幸せに満ちていた。

それくらい、僕にも分かった。





「そうか。…そうだよな」

「薬師寺。ほんと、もう、いいんだ」

「だが、それじゃお前が」

「吾郎くんは幸せなんだ」

「…」

「だから、いいんだよ」




偽ってなんかいないのに
嘘を吐いたような感覚だ。

心と脳が違うことを叫んでる。









どうして…君を好きになってしまったんだろう?
あの頃の僕らのことを
(もう戻れない)考えた…
(もう戻らない)考えた…










わ、と歓声があがるのと同時に大きな扉がゆっくりと開いた。

舞い散る花弁とカメラを構えた人の群れが邪魔をして、少し離れたところにいる僕からきみの姿はよく捉えられなかったけれど。

見なくたって分かる。

君は僕の大好きな笑顔を見せて、僕じゃない人の手を握ってるんだ。
ちっとも似合わない白のタキシードなんか着て。
少し照れたように頬を紅潮させて。




ああ、やっぱり。
神父の前に彼女と並んだきみはとっても綺麗だった。





「誓います」





それは僕にとって
まるで死刑宣告。




すべての儀式は流れるように進んで。
その間の記憶は曖昧だったけれど。
気がつけば、僕は薬師寺に付き添われ、新郎新婦退場の花道の最後尾にいた。

ひとりで、だいじょうぶだから。

後ろの薬師寺に顔を向けて告げる。
笑顔が作れていないのは自分でもわかったけれど、彼にこれ以上迷惑はかけられない。
僕が決着をつけなければいけないことなんだ。
薬師寺の端正な顔が一瞬、苦しそうに歪んだ。





「よぉ、寿」

「ご、ろう、くん…」





振り返ると、そこには愛しいひと。
ずっと、僕の隣にいるはずだったひと。




ごめんね。
ごめんね。

僕には、無理だよ。



視界がぼやけて、吾郎くんの顔がよく分からない。





「おいおい、なに泣いてんだよ。オレの人生の晴れ舞台だぜ?」

「ご、めん」





大きな手のひらで僕の髪の毛を掻きまわす仕草は、あの頃と何一つ変わらない。



ごめんね。
こんなにも祝福されてるきみの姿を。
僕は、どうやって見送ればいいのか
分からないんだ。




吾郎くんの首に腕を回す。
これが最後だから、と自分に言い訳をして。

彼の匂いを、体温を



これでもう、忘れよう。





「幸せに、なってね」

「…あぁ。約束する」










それでも…
きみが僕のそば離れていっても
永遠に君が幸せであること
ただ願ってる
(例えそれがどんなに寂しくても)
辛くても…





┼┼┼┼┼
「どうして君を好きになってしまったんだろう?」:東方神起

4thアルバム「The Secret Cord」収録曲

初ゴロトシ。ただひたすら楽しかったです^^
あえて原曲PVとは違う雰囲気で
歌詞が文章に織り込み易くて嬉しかったです。

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あきゅろす。
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