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HUG(慶半)
なんとなくだけど
言葉にすることで
なにもかも消えてしまいそうで
竹中半兵衛に、一緒に帰ろうと誘われた。
教室ですらまともに話したことのないのに、昼休みのとき、「良かったらどうかな?」なんて可愛く小首を傾げて言われたら、オレじゃなくたって照れるだろう。
竹中半兵衛に片思い中の、オレじゃなくたって。
半兵衛がオレの片思いに気付いているかどうかはわからないけど、中性的な雰囲気の半兵衛は、以前からそーゆー嗜好の奴だという噂は少なくない。
くだらない噂を全て鵜呑みにしている訳ではないが、あの誘いかた。
若い男の身としてはこれはゴーサインなのかが意外と大きい問題だったりする。
むしろ据え膳?とか馬鹿みたいなことまで考えたけれど、生憎オレは男相手の経験がない。
まぁ結局は、事情の分かっている佐助に縋るのがいつものパターン。
「どどどどうしよう佐助っ!!」
「どうしようもこうしようもないでしょーが。ここで頂かなかったら男の恥っしょ」
「やっぱ据え膳なのか」
「まぁどっちにしろ、男が男襲っても強姦罪にはならないから平気だって」
「それは人としてまずいだろ」
「えー?ファックしちゃったらこっちのもんよ?揺するも脅すも慶ちゃん次第」
「怖いよおにーさーん」
モテ男への相談は収穫ゼロのまま、ついに放課後がきた。
でもまだぼくには
なにかが足りなくて
頼りなく揺れている
いえない想いは
「…で、それから?」
「また明日、って手振って」
オレを見る佐助の視線に、明らかに蔑みの念が含まれている。
「なんもしないで帰って来たんだ?」
「だから、バイバイって、」
「慶ちゃんさぁ、中学生の初デートじゃないんだよ?手も繋がないとか有り得ないんだけど」
「だって、お…とこ、同士だぜっ?」
「今更でしょ」
「ぐ…」
翌日、落胆ともとれるような態度で佐助に説教を食らった。
想像どおりといえば想像どおりの反応。
やれやれ、と首を振る佐助が恨めしくも思えたけれど、相談しているのはオレだから文句も言えない。
しかし、あの状況に対応できるようなスキルは今のオレにはまだないのも事実。
ふとした瞬間に流れる沈黙が怖くて、必要以上に舌がよく動いた。
まるで初デートで緊張のあまり饒舌になる女の子みたいに。
それでも近くに感じた半兵衛の肌は柔らかそうで、身長差でオレより低い位置にあった肩は薄く、抱きしめたい衝動は募るばかりだった。
「とにかくっ、今日も何もして来なかったなんて言ったら股間潰して使い物にならなくするから」
ヤメテヤメテ。想像するだけで痛すぎる。
笑顔の親友は、軽い調子で死刑を宣告した。
「慶次くんさ、」
「ん?」
少し人波の途切れた細い道。
緊張しているようにもとれる声色で、半兵衛が俺の名前を呼んだ。
「彼女とか、いないの?」
癖なのだろうか、小首を傾げるあの尋ね方で、軽く爆弾を投下する。
ここで嘘を吐く必要もないし、素直に頭を横に振る。
「そっ、か」
「…」
ふふ、と声を出して顔を綻ばせる半兵衛に、完全に振り回されている気がする。
何考えてるか、ほんと、分かんないんだよな。
まぁ、そんな半兵衛の前で焦りを隠してるオレもオレだけどさ。
「つ、つかっ、半兵衛はどうなんだよ」
微妙な空気を払拭するように、無理やり声のトーンを上げて聞き返す。
一瞬思案顔になった半兵衛は、直ぐに思わせぶりな笑顔でオレに言う。
「好きになって欲しい人ならいるよ」
くらり、と眩暈を感じる。
こいつは、こんなに、色っぽい声を出すやつだっただろうか。
佐助、これ、ゴーサインだよな…?
立ち止まった半兵衛の両肩に正面から手を回す。
あふれていく想いは、もう止まらない。
「半兵衛、オレさ、」
決して離さない
誰にも渡さない
気がつけば抱きよせて
囁いてたんだ
I love you
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「HUG」:東方神起
1stアルバム「Heart,Mind and Soul」収録曲
これの原曲(韓国版)のPVの可愛さは殺人的です。
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