黒子 冷たい手でもいいよ 伊月 甘? 冬は嫌いだ。 だって寒いから。 そんなことを言ったらまたリコに笑われちゃうかな。 だってバスケットは基本、ウインタースポーツだから。 今日もまた、雪が降った。 しんしんと降り注ぐ雪はまるで羽みたい。 そんなのんきなことを言っていたのは小学生までだったな。いまでは邪魔なだけ。雪ののせいで外走れないし、指がかじかんで、ボールをさわるのがすこし痛い。 だから今日の重装備。 マフラーと手袋、帽子は必需品。 速足で部室に入り、寒いなーとおもいながら、装備を解く。 「はあ・・・・。さむ・・っ。」 準備をして、いざ体育館へと足を運ぶと、聞きなれた音がした。バッシュのこすれる音と、ネットの音。 「伊月、おはよ。」 「ん?あ、愛佳。おはよ。」 伊月が、シュートを打っていた。 「朝早くに、よくやるねぇ・・。」 「まあ、一応レギュラーだからな。」 そう言いながら真剣な表情をみせる。 伊月は私の彼氏でもあったりする。 だから、こうやって寒いのが苦手でも毎朝、伊月との朝練のためにきてる。 私はポケットからほっかいろを取り出すと、手の中であっためた。ずーっとそうしてると手の平だけはぽかぽかになる。 今日もあたしの彼氏さんは、夢中でシュートを打つんです。 なぜなら、大会が近いから。 それと、フリースローが苦手なんです。 いや、それでもかっこいいんだけどさ・・。 「ふう…。」 ひととおりおわったのか、ため息をつきながら伊月はあたしの隣にやってきた。 「おつかれ。」 「どーも。」 冬になると、シュートしてても手がかじかむ。 伊月は両手に、息を吹きかけた。 「そろそろ…行くか?」 「うん。」 「あ、ちょっとまって。」 伊月の手をにぎろうとしたとき、伊月が止めた。 「いままで、シュート練してたから、冷たいよ?」 「え・・・、いいよ。だって、 『冷たい手でもいいよ』 そのために私は 毎朝ここにきてるのよ。 next [戻る] |