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蛇足

「福岡って実は凄かったんだな。俺、福岡の事凄く甘く見てた……。」

彦星は一人、突っ込みどころ満載の台詞を吐きながら自分の故郷に思いを馳せていた。

「……それで、実家が福岡であるキミは一体どこに住んでるだい……?」

「ん?あぁ、その話な。えーと、俺は“ぎょくせんいん”に住んでる。」

……ぎょくせんいん?

「何それ?この学校の寮か何か?」

「ちげーよ。ウチのばーちゃんがやってる下宿すっとこ。」

下宿。道理で…、と楓は納得した。

そうでないなら、ワザワザこんな馬鹿を大金出してこんな所まで出すわけない。

しかもその事実から察するに、両親は彦星を家から出したかったのではないかと楓には思えて仕方なかった。

「へー、下宿かぁ。彦星のお婆さんって凄いんだね。」

「全然凄くなんかねーよ。ただのウゼー婆さんだって!」

スゲー口煩せーの!とウンザリしている彦星を前に楓は
そりゃあ、お前を見てたら誰だって口煩くもなるよ
と、内心会った事もない彦星の婆さんの気苦労をまるで自分の事のように感じていた。

すると、突然彦星がベッドから降りて楓に近寄ってきた。

「ってか凄いのはお前だよ!お前スッゲー頭いーじゃんか!俺凄いソンケーしたもん!」

「そ…、そうかな?」

そらお前らよりはな、と思いながらも楓は純粋に嬉しく思い照れていた。

「そーだ!楓!お前もぎょくせんいんに来りゃいーじゃん!それだったらお前、毎日ツワリに悩まされなくてもすむだろ?!」

「……………は?」

「な?来いよ!今俺しかぎょくせんいんにはいねーから部屋たくさん余ってるぞ!」

「いや、俺下宿する程家遠くないし…。」

つか、お前といたら体力もたねーし。

「あ!もしもしばーちゃん?俺!あのさ、一人俺のダチで下宿したいってヤツが居てさ!連れてっていーか?」





って、コイツ何やってんだよ?!
俺下宿するとか一言も言ってねーし!

楓は目の前で繰り広げられいる光景に全くついていけずにいた。

楓が混乱して何も出来ずにいるウチに通話は終わり彦星がケータイをポケットにしまいながら満面の笑みを浮かべて楓を見た。

「ばーちゃんがいーってさ!良かったな楓!これで毎日ツワリの心配しなくてすむな!」

その瞬間、楓は本日二度目の嘔吐をすることになるのだった。



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