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蛇足
彼のお母さん
「さぁ、楓ちゃん。こっちこっち」

楓は笑顔で手招きをするよしえに促されながら、店の奥へと入って行った。

店の奥……


そこは、店の奥というより自宅であった。

「店の奥って自宅なんですね?」

楓が家の中を見渡しながら尋ねると、よしえはにっこりと微笑んで答えた。

「そうなの。もともとお花屋さんは私の小さな時からの夢でね?タカシさんが君がやりたいならいいよって。あ、タカシさんっていうのは私の旦那ね?」


タカシさんか……

そこは名前リンクさせてないわけね

残念だな

例えば…よしきさんとかだったらバッチリだったのに

それにしても、やりたいならいいよなノリで妻に花屋やらせるって、どんだけ経済的にも精神的にも包容力ある人なんだよ……

凄いな、よしお君のお父さん、もといタカシさん


楓がそんな事を考えていると、テーブルの上に紅茶が置かれていた。

素早い。

さすがに接客業をしていらっしゃるだけのことはある。

ただののんびり屋さんなわけではないようだ。

「さ、どうぞ。」

「ありがとうございます」

楓がぺこりと頭を下げると、よしえはニコニコとした表情で楓を見ていた。

「え…と、あの。これ一応履歴書です」

「はい。確かに頂きました」

よしえはそう言うと早速楓の渡した履歴書を広げて見始めた。

そして何かに気付いたようによしえは楓の方を見た。

「楓ちゃん?身長は?」

「し……身長ですか?」

やっぱりソコつっこんじゃうの?!
つか必要なくね?!

「……170センチです」

「それは……願望かしら?」

………痛い。
心が痛すぎるよ。

心底不思議そうな顔で尋ねてくるよしえさんに俺はガクリと肩を落とした。

「はい…願望身長です」

……願望身長って。
何だよそれ。
初めて使っちゃったよ。
あははは。

「そうよね?私と同じくらいなのに170センチはおかしいと思ったわぁ。それで?実際の身長は?」

笑顔が痛いです、よしえさん。

「……166センチです」

「まぁ!よし君と丁度10センチ差ね!キリがよくて素敵だわ!」


……10センチ差
よしお君が156センチなわけは決してないから……

176センチかよ?!

なんだよこの差!
同い年だろ?!
頑張れよ俺のDNA!

楓が自分のDNAの不甲斐なさに軽く涙を浮かべると、よしえはまたもや何か思いつきましたという表情を楓に向けた。

その顔が楓にとっては恐怖で仕方なかった。


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