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蛇足

楓がよしえの“小さい”発言に心底落ち込んでいると、楓の隣に立っていたよしおが苛付いたようによしえを睨み付けた。

「てめぇ、余計な事言ってねーでさっさと面接しやがれ!!」

「あぁ、そうね。お母さんつい話し込んじゃったわ。えぇとアナタは……」

「三木「三木楓だ」

楓が傷付いた心を引きずりながら名前を言おうとしたが、その言葉はよしおによって遮られた。

というより勝手に紹介された。


うん、
よしお君はたまに
キングオブ俺様だよな。

そう思い楓がよしおを見上げると、丁度よしおと視線がバチリと合った。


“凄く小さいわ”


……………

よしおと目が合った瞬間、先程のよしえの言葉が頭をよぎり、楓はそのまま羨望の眼差しをよしおに送った。

すると、いつもの如くよしおは勢いよく楓から視線を逸らして乱暴に言い放った。

「ジロジロ見てんじゃねーよ!キメェんだよ?!」

……よしえさん、アナタのお子さん

やっぱかなり口悪いですよ

楓は羨ましさと悔しさからフイと不機嫌そうによしおから視線を逸す。

その瞬間、そっと横目で楓を見ていたよしおがショックを受けたような表情を浮かべたのを、よしえはしっかりと見ていた。

「あらあらあら」

いつもの乱暴なだけとはひと味違う息子。

そんな息子の新たな姿に、よしえは自然と出てくる笑みを抑える事ができなかった。

「……なに笑ってやがんだ、このクソババァが」

「何でもないわぁ。さぁ楓ちゃん?面接するから、こっちへどうぞ?」

「あ、はい。わかりました」

……おばあちゃんといいよしえさんといい……

何故に俺は男なのにちゃん付けされるんだろう

なかなかに恥ずかしいんだけどな


楓が一抹の恥ずかしさを覚えながら店の奥へと向かおうとすると、何故かよしおまで付いて来た。


え?まさか面接ってよしお君まで同伴なの?


楓の考えを察したのかよしえが困ったようによしおを見た。


「よし君?楓ちゃんとずっと一緒に居たいのはわかるけど、私が此処に戻るまで店番しててもらえる?」

その瞬間、よしおの動きが全て止まった。

多分本人も無意識のうちに楓に付いて行こうとしていたのだろう。

最初は驚いたような表情で固まっていたが、徐々に顔を赤く染めると突然楓の背中を店の奥へ押し込み、乱暴に扉を締めてしまった。

なんなんだ……よしお君の赤面症が一体どういう気持ちのメカニズムで起こるのか研究してみたいな、ほんと。


楓がよしおによって閉められた扉を不思議そうに見つめていると、よしえはクスクスと笑いながら楓を見ていた。

「あの子ったら初ねぇ」

うーん、やっぱり親子。あのよくわからないよしお君の行動を、母親は理解していると見える。

俺にはサッパリなんだけどね

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