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蛇足

「わかった!わかったから離せ!」

よしおは真っ赤になりながら、楓に握られた手を離すように求めた。

緊張しているのか体もガチガチに固まっている。

「っあ!ごめんごめん!手なんか握っちゃって!気持ち悪かったよね?」

楓はそう言うと慌ててよしおの手を離した。


あー、ヤバいヤバい。

余りの興奮と驚きでノリが彦星みたいになってしまった。

なんだろう。

今、俺ナチュラルによしお君の手なんか握っちゃって……。

ずっと彦星と一緒に居るせいで、手を握ったりとか抱きつかれたりとかは俺自身はあんま抵抗なくなったけど、普通はそうじゃないんだよな。

なんか変な所が馴れてきちゃってヤバいぞ。

直さないと。


楓が彦星に浸蝕されてる……と、自分の手を見ながら落ち込みまくっていると何を勘違いしたのかよしおが慌てだした。

「いや!別に嫌とかきもちわりぃとかそんなんじゃねー!!勝手に勘違いすんな!」

いきなり怒鳴られた楓は一体何事かとよしおを見ると、なんだか真っ赤なまま何やらモゴモゴしている。

「と、とりあえず!お前が俺の手を握っただけできもちわりぃなんて思わねぇよ!わかったか?!」

ハァハァと肩で息をするよしおを楓は目をパチパチさせて見つめた。


……これはさっきの俺が言った「気持ち悪かったよね」発言のフォローととって良いのだろうか。


多分そうなのだろう。

彼の事だ。

楓がそれを気にしていると思ったに違いない。


「(良い奴すぎるよ、よしおくん)」

楓は今度こそきちんとよしおに向き直ると、ニッコリと笑った。

「これからよろしくお願いします、よしおくん」

そう言ってお辞儀をする楓に、よしおは一瞬目を見開いた。

しかしすぐにフッと表情を緩めると「あぁ」と小さく返事をした。

その返事に楓は顔を上げてまたよしおに微笑んだ。




俺を見捨てた父さん母さん。

また新しい友達ができました。

俺は……けっこう元気です。

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