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蛇足
3
「そ、れ?」

若干声色が最初同様厳しさを帯びた楓に、よしきはヒクリと喉を鳴らす。

それと同時に楓の手はよしきの頭から離れ、自らの体の前へとしっかり組まれていた。

「そう。キミのその、聞けば必ず答えを貰えるという他力本願な考え。教えてくれと他人を頼り自ら考える事を放棄した人間に、言っておくけど成長はないよ」

厳しく言い放たれた言葉によしきはズキリと胸が痛むのを感じた。

そんな事ない。

勝手な事を言うな。

そう言い返してやろうとした。

しかし、楓の放った言葉に何故だかよしきは言い返す事が出来なかった。

声を出そうとしても、微かに空気が喉を通るだけで声にならない。

その為、よしきはただ此方をじっと見つめてくる楓の目をひたすら受け止めるしかなかった。


「他人に教えて貰うのも大切。素直に聞き入れるのも大切。だけど、勉強は……受験は最後は一人だ。誰も助けてはくれないし、答えをくれる人は居ない。キミに足りないもの、それは自立した向上心だ」

「…………っ」

「最初にキミは言ったね。蔦谷では何も学べないって。……ねぇ、本当にそう思う?」

「それ……は」

「言っておく。勉強は学ぶ意欲と意志さえあれば……どこでだってできるものだよ。よしき君」

楓はそう言うと、微かに目を細め、

笑った。

「だから、よしき君。下とか上とか……気にしないで。まず自分を見てよ。それが今の君に一番必要な事だと、俺は思うから」

楓はじっと此方をどこか驚いたような表情で見つめてくるよしきにどこか微笑ましいものを感じた。

最初は無礼な子だと思った。

人の友達を馬鹿にして、
兄弟を馬鹿にして

だけどそれは違った。

そう、彼はただ……素直だった。

自尊心が大きいように見えて、よしきは楓の話にはきちんと耳を傾けた。

きちんと目を見て話をした。

自分の非に対してはそれをきちんと受け入れた。

「(よしき君……そっくりだなぁ。よしお君と)」

楓は今此処に居ない自分の親友を思い出すとクスリと小さく笑った。

「(根はいい子なのに誤解されやすい性格とか……口が悪い所とか)」

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