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東方僧侶録
竹取の乱
「かぐや姫?只の噂ではないのか?」

「それはそれは美しいと、評判で御座います。と言っても、私は見た事は御座いませぬが」

最近都に広がっているかぐや姫の噂・・・真の物とはな。

なんと不比等殿も通い詰めているらしい。

妹紅姫が前に愚痴っていたからな。

どれ程の物か、興味が湧いてきたな。

「牛車の準備をせい。見に行くぞ」

「すぐに」

さて・・・噂は真かな?



1時間後、私はある屋敷の一室に案内され、かぐや姫を待っていた。

「失礼します」

来たようだな。

「左大将様、お待たせして申し訳ありませんわ」

「いや、それ程待ってはおらぬよ」

ふむ・・・確かに美しいが、幼過ぎるな。

それに・・・

「どういった御用で?」

「我は周りくどい言い方は好かぬ。単刀直入に申すぞ・・・うぬは月の民じゃな?」

「!!」

どうやら図星の様だな。

かぐや姫を見た瞬間、私はすぐに確信した。

かぐや姫には穢れが存在していないのだ。

そんな存在は私は彼等しか知らない。

そう・・・月の民しか。

「・・・何の事かしら?」

「隠すでない。我は月の民の事を良く知っておる・・・うぬよりも遥かにな」

「・・・左大将様は、面白い御方ね」

「まだ信じられぬか?ならば・・・」

未だに信じていないかぐや姫に、私は弟子達に教えた言葉を紡ぐ。

「我とは生命・・・そして、仏とは生命なり」

「それって・・・」

「かつて月の民が地上に居た時に、我が弟子達に伝えた言葉ぞ」

「もしかして貴方は・・・貴刻宗初代法主の、乾隆寺永治大師?」

そこまで驚く事も無いだろうに・・・

「今の名は源頼光ぞ。最早仏門に戻るつもりは無い」

既に私は、この生活に染まってしまっている・・・もう戻れまいよ。

「そ、そう・・・」

「月の民に会うのは何時振りであったか・・・かぐや姫、月の民が今どうしているのか、教えてくれぬか?」

「分かったわ。じゃあ・・・」

説明中・・・



「やはりか・・・哀れなものよ」

どうやら月の民は昔とは見る影も無い程に腐敗し、地上の者達を見下しているとの事だ。

私の危惧した通りになってしまったか・・・

だが堕落していない者達もそれなりにいるようで、永琳や月夜見、貴刻宗の者達は堕落していないとの事・・・

私の教えは無駄ではなかったのだな。

「そしてうぬは不老不死の薬を飲み、地上に追放されたと・・・」

「月の民は、地上を牢獄と考えているからね・・・特に月で生まれた者はそれが計著なのよ」

「不愉快・・・不愉快ぞ!!自らが生まれた大地を牢獄とは、どこまで腐敗したか!?」

「そして次の満月の日、月の民が私を迎えにくるの」

「その話h「その話は真か!?」不比等殿!?」

何時の間に!?

「そんな事はどうでも良い!かぐや姫が月に帰ると言うのは真か!?」

「は、はい・・・」

「こうしてはおられん!帝にお伝えせねば!あ、姫は置いて行くから、お主が送って行け!!」

嵐の様に去っていったな・・・

「あの・・・頼光様?」

「やはり姫も来ていたので御座いますな。不比等殿が行ってしまった今、此処に居ても仕方あるまい・・・かぐや姫よ、我はこれで失礼させてもらうぞ。姫、先に我の牛車に行かれよ」

「分かりました」

「それと・・・次の満月の夜に、恐らくうぬを巡って戦が起きるであろうが、決して手出しは許さぬ。良いな」

「そんな・・・月の民に勝てるはずがないわ!!」

「例えどんなに強力な武器を持とうとも、心が伴わなければ幼子にも劣る物ぞ。安心せい、我等が戦っている内にうぬは何処へなりとも逃げるが良い」

「えっ!?」

「うぬが月の話をする時、不愉快な顔をしておったろう?それは月には戻りたくないと、言っておるような物ぞ。だが・・・永琳の話をした時、嬉しそうな顔をしておったな?恐らく永琳と共に逃げようと思っているのではないか?」

「・・・驚いたわ、そこまで分かってるなんて。分かったわよ、大人しくしているわ」

「それで良い。ではな」




さて・・・不比等殿のあの様子からして、戦になるな。

普通は月の民と戦って勝つ事は不可能だ。

だが・・・月の民を良く知っている私ならば話は別だ。

その傲慢の鼻をへし折ってやろう・・・




そして次の満月の日・・・

「・・・そろそろか」

不比等殿の話を聞いた帝は、兵を出撃させ屋敷を取り囲んだ。

その数8千・・・まるで戦の様だ。

それを指揮する大将軍に、予定通りに私が抜擢された。

後は奴等がどう動くかだが・・・

出来る限りの手を打ち、敗北の苦渋を味あわせてやろう。



しかし・・・

「頼光!何を黄昏ておるか!!」

不比等殿が、警護に参加しているのは何故だろうか?

「・・・何故居られる」

「かぐや姫を月には帰らせん為じゃ!!」

「貴方には妹紅姫が居るのです。決して無理はなされるな」

「分かっておる!」



「牛車が見えるぞ!!敵だ!!」

兵士の一人が叫んだ。

「来おったわ!!」

「弓大隊構え!我が指示するまで、放つでないぞ!!」

「はっ!」

それを聞き、直ぐ様弓兵達は身構える。

「我の弓を!」

「こちらで御座います!!」

従者が手渡した弓は『影法師』と言い、私の愛弓である。

神力を使って強化しているので、決して壊れる事は無い。

勿論威力も高く、月の技術程度の硬さなら紙の様に貫ける。




そしてみるみる牛車は近づいて来る。

牛車は全部で50台。かなり大きい。

一台に100人ぐらい乗れるだろうか?


罪人の護送に、これだけの戦力を投じる事はまずありえん。

確実に重要人物が居るな。



そして牛車が兵達が攻撃できる範囲にまで近付いた時・・・

「放てい!!」

バシュバシュバシュバシュバシュッ!!

私は号令を飛ばし、豪雨の様な矢が牛車に降り注いだ。

攻撃してこないとでも思っていたのか、牛車に乗った月人達は混乱し、列を乱し始める。

「牛車をいくらか、破壊出来た様で御座います!!」

やはり、何の処理もされておらん様だな!

「続けて射よ!牛車の中から燻り出すのじゃ!!」

更に攻撃を続けると、月人達が慌てて牛車から降りてくる。

「よおし!抜刀隊突撃ぞ!我に続けい!!」

其処に不比等殿が抜刀した兵士達を率いて突っ込んでいく。

月人達も必死に銃器を撃って抵抗するが、次々に討ち取られていく。

「・・・拍子抜けよなぁ。これでは戦にもならぬわ」

「頼光様の采配が、素晴らしいので御座います」

「ふっ・・・敵を討ち果たした後は、あ奴らの武器を全て回収しておけ。何かに使えるやもしれん」

「御任せ下さい」



バシュッ!

「ぬっ!」

突然飛んできた矢を、影法師で叩き落とす。

「出会い頭に矢を放つとは・・・随分と無礼な女子よな」

そう言って私は矢を放ってきた人物・・・八意永琳に目を向ける。

「貴方が大将ね?悪いけど死んでもらうわ」

私だとは気付いていないようだな。

姿が大きく変わっているから、しょうがないだろうが・・・

ここはわざと正体を隠し、どれ程成長したか確認するとしようか。

「頼光様!!」

「我の弓矢を持っておれ!良いか、うぬ等は手を出すでないぞ!此奴は我が始末する!!」

「死ぬ準備は出来たかしら?」

「ふん、実力の差も分からぬか・・・痴れ者めが!!」

「只の人間に負けるほど、落ちぶれてはいないわよ!」

バシュバシュバシュッ!

永琳は同時に複数の矢を放ち、攻撃してくる。

「ふん!!」

スパッ!

だが私には通じん!

「どうした?これが攻撃か!!」

「くっ・・・」

再攻撃するつもりか・・・だが!!

「遅いわ!!」

ヒュン!

ザンッ!

「しまった!?」

弓を破壊すれば、最早戦う手段は無かろう!

「これで戦闘力は無くなったな!」

「まさか、只の人間に負けるなんて・・・くっ!!」

バッ!

逃げたか・・・それで良い。

負けはしたが、随分と力を上げたようだな。

「待て!」

「追わずとも良い!丸腰の相手に手を出すのは許さぬ!!」

「ぎょ、御意に御座います!」

これで良い。

上手くやるのだぞ・・・





そして月人達は一人残らず討ち取られ、味方の損害は700人程度と圧倒的勝利を得た。

そして・・・

「かぐや姫が居らんじゃと!?」

予定通りかぐや姫が永琳と共に逃亡した様だ。

「かぐや姫が居られた部屋にはこの壺しか・・・」

壺の中には何か白い液体が入っていた。

・・・成程、これが不老不死の薬か。

「・・・この壺と月人の武器は我が預かろう。誰ぞ、この事を帝に」

「はっ!」

「おのれい!月人共め!!」

不比等殿には悪いが・・・許されよ。




その後、帝はかぐや姫を守りきる事が出来なかった事を聞き、嘆いたが警護に参加した者達を処罰する事は無かった。



そして数日が過ぎ・・・

「おい、頼光・・・そろそろ姫と結婚せい。そして早う孫の顔を見せんか!」

「いきなりですな・・・」

不比等に詰め寄られていた。

「ですが・・・一つ問題が」

「不死の事か?それは問題無いぞ!姫!」

「はい」

不比等殿に呼ばれて妹紅姫が出てきたが、何故か髪が純白になっていた。

「姫!その髪は・・・」

「あの薬を飲んだら、こうなってしまって・・・」

「あの薬?・・・まさか!!」

あの薬を飲んだのか!?

「すまんな、頼光。お主が居らぬ内にこの屋敷に運び込み、姫に飲ませてしもうた」

「この薬を飲んだら最後、永遠に老いる事も死ぬ事も出来んのですぞ!!」

「私は構いません。頼光様と共に歩みたいのです」

「不比等殿!貴方もそれで宜しいのか!?」

「我も構わん。娘の願いを叶えるは、親の役目ぞ」

ここまで覚悟が有るとは・・・最早何も言えんではないか!

「分かり申した・・・お受けしましょう」

「本当ですか!?」

「我は嘘は言わぬ」

「ああ・・・なんて嬉しいのでしょう!一生付いていきますわ!!」

「いや、めでたいのう!すぐに婚礼の儀を行おうではないか!」



こうして私と姫・・・いや、妹紅と夫婦になった。

子宝にも恵まれ、平穏な日々を送っていた。(不比等殿は大層喜んでいた)




そして時は流れ、1156年になった。

不比等殿は亡くなり、源氏と平氏が対立を深め緊張状態が続いていた。

そして私は、未だ左近衛大将の地位に居る。

普通は何かしらの噂が立つのが普通なのだが、そのような事は一度も無く逆に『源大将』という異名が付いたのだ。

そして・・・

「おう親父・・・帰ったぜ」

「頼国、帰ったか」

私の子供の内、残ったのは嫡子である頼国だけになってしまった。

どうやら頼国は、私と妹紅の血を最も多く引き継いでいるらしく、他の子供達には無い能力と、長い寿命を持っている様だった。

だが・・・何故見た目が、銀魂の松平片栗虎そっくりなんだ?

「どうしたぁ?親父」

声といい・・・見た目といい・・・

しかも服装も、武器も全く同じだしな。

「いや・・・何でもない。戦は止められぬのか?」

「無理だなぁ。後白河の野郎、本気で崇徳上皇を潰す気だ。左近衛中将の立場じゃあ止められねえよ」

「そうか・・・」

後白河め・・・そこまで権威が欲しいか!

「親父・・・この件、俺が片ぁ付けるぜ」

「・・・何故か?」

「何・・・只の気まぐれさ」

「良かろう。頼国、全てうぬに任せる」



これから、源平合戦が起きるのだろうな。

既に正史とかけ離れたこの世界では、一体どうなるのだろうか・・・・

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