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小話(リボーン)
これでも任務中。@(10年後雲獄)
雲雀と付き合ってもう10年は経つ。
今ではもう公私共に絶好のパートナー…というか、雲雀は単独行動以外では俺としかまともに仕事をしないので、結果そんな感じになっている。
なんせ幅広い情報網に、部下への的確な指示、そして守護者最強と謳われる腕っ節があるのだ。
まともに働いてくれればこんなに良い人材はいない。
接近戦を主とするから、中・遠距離支援の俺とも相性が良い。
そんなわけで、俺はボンゴレと同盟を結んだファミリーから薬を受け取り持ち帰る、という仕事のパートナーに、雲雀を指名した。
たかが薬、されど薬。
液体としての恐怖よりも噴霧したときの威力は破壊的で、この薬一滴でマフィアのファミリー一つ軽々潰せる程の猛毒なのである。
本来特殊弾や10年バズーカといった、特殊な構造と能力を持つ道具を研究していたはずの学者が、本当にたまたま作ってしまったそれは、解毒剤を作る為、または抹消するためにボンゴレの研究室に運ぶ事が考えられた。
そして、今に至る。





「…やっぱり動かねぇ?」

車の窓から顔を出し、ボンネットの中を覗く雲雀に声をかける。
雲雀から特に返事が無いという事は、駄目な証だ。
無事に薬を受け取ったまでは良かったが、車を運転中に襲撃された。
凶悪な薬の噂というのはどんなに管理しようともどこかで漏れ、そして必ず狙うファミリーが現れる。
これも例に漏れず、大量の車に襲撃されたのだ。
まぁ、基本襲撃されたところで問題ないので、雲雀のロール、俺のフレイムアロー、そして瓜と共に迎撃したのだが。
人間よりも先に車がイカレてしまった。

「雲雀、もういいぜ。この車はここで捨てよう」

どうせ車のナンバーは控えられているし、もしかしたら発信機の一つや二つ取り付けられているかもしれない車である。
ボンネットには結構な数の銃弾も受けているし、この件で廃車にしてしまっても十代目も諦めてくださるだろう。
そう思い、俺はここから一番近い支部に連絡をしてから車から降り、薬の入ったスーツケースを持って雲雀に近付いた。
多少不機嫌そうな顔はするものの、雲雀もそれは仕方ないと思ったのか了承する。
さて、これからどうしようか。
車を頼みはしたが、次の町には着いておきたい。
だが、まだそれなりに距離がある。
瓜に走ってもらうというのも手ではあるが、自分の相棒を乗り物代わりに使う気はない。
そもそも、これから更に敵が来るはずで、疲れさせるわけにもいかない。
ならば歩くか、それとも。

「…君、ヒッチハイクとか考えてないよね?」

「ん?よく分かったな」

返事をすれば想像通りにため息が返ってきた。
まぁ、こんな大層な薬を抱えていながらヒッチハイクなんて考える人間、そうはいないだろう。
でも、なんとなく大丈夫な気がする。
こいつと一緒だからだろうか?
なんて、我ながら乙女な思考だ。

「まぁ、大丈夫だろ?」

歩きたくないし。
付け足して言えば、それなら抱っこぐらいするのにというとんでもない返事が返ってくる。
が、そんなのはさらっと流して俺は車を待った。
ちょうど良いタイミングで一台車が来る。
あの大きさなら二人ぐらい大丈夫だろ。
よもや民間人の車に俺達が乗るとは思うまい。
あの車の運転手が敵でなければ。
ま、敵であっても別に良いけど。
俺は笑いながらシャツのボタンを一つ開け、リップクリームを塗り、ついでに眼鏡をかけた。
雲雀曰く、眼鏡で色気三割増しというのは本当だろうか。


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あきゅろす。
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