小話(リボーン)
君の為ならA
「向こうのマフィア、降参してくれるって。お疲れ様、獄寺君!!」
「は、はぁ…」
何を言ってきたのだろう。
聞きたいようで、恐くて聞けない。
「というか、十代目、敵のボスなんてどうやって…」
「オレが連れてきた」
「!!……ほ、ホントだったのか…」
さらりと言ったザンザスに、俺は先ほどフラン達が言っていた事を思い出す。
まさか本当にやってしまうとは。
「…こんな奴を連れてくるぐらい、問題ない」
「い、いや、すごすぎねぇか?」
「それよりも、遅くなったな」
「え゙」
いやいやいや、謝られるとか一体何がどうなった!?
混乱する俺の隣で、十代目が苦笑いする。
「とにかく、戦いはもう終わり。みんなを集めよう」
「あ、はい」
「オレは行くからな」
「あ、」
最後にだめ押しでボスの脇に銃を放ったザンザスは、疲れたように言って、ドアノブに手をかけた。
「ザンザス、ありがとな。大変だった…よな?」
敵のボスを連れてくるだなんて、普通出来るわけないだろうから。
その背中に声をかけると、ザンザスはくるりと振り返り、
「お前の為だ、構わねえ。それより」
「…それより?」
「………オレのは]のマークだ」
そう言い残して、行ってしまった。
なんなのだ、さっきから。
俺の為と言う理由も分からないし、スクアーロ達も言っていた単語の意味も分からない。
「獄寺君」
疑問は結局疑問のまま、十代目に呼ばれて振り返る。
「ちょっと休んできなよ。疲れたでしょ?準備が出来たら、呼んであげるから」
十代目はにこやかな笑顔でそう言った。
俺には多分やるべき事が大量にある…そう思ったが、どうやら十代目の笑顔には刃向かう隙がない。
俺は十代目の「呼んであげるから」の意味も、何もかも理解出来ないままに、仕方なく部屋に向かった。
戦闘は早期終了。
しかも敵対マフィアのボスを落とすという異例の方法で撃破。
一体何がどうなってこんな結果を導いたのか、わけが分からない。
もしかしたら、俺の作戦があまりに使えないから、ザンザス達に協力を依頼したのだろうか。
一人で部屋に戻った俺は、残してきた部下、スクアーロ達、そして十代目の心配と、そんな不安を抱えながら椅子に座っていた。
もう十代目と別れてから二時間だ。
呼びに行く、と言われた手前、外に出る事も、寝る事も出来ない。
ただ何をするでもなく、ぼんやりとしていると、ドアをノックする音が響いた。
「隼人」
「…雲雀?」
ドアを開けると、頬に怪我をした雲雀の姿。
「おま、どうしたんだよその傷!」
「そんな事はどうでも良いよ」
「良くねぇだろ!!」
雲雀がいたのは罠の一つだったが、敵もいたらしい。
他に怪我をしてないか心配と同時に、一人休んでいた罪悪感からオロオロする俺の頭を、雲雀は撫でる。
「良いんだよ。それより、早くしなよ」
「は?」
そのまま撫でていた手を下ろして俺の腕を掴んだ雲雀は、勝手に引っ張ると俺を部屋から引きずり出した。
何を言っても止まらない雲雀に仕方なくついていくと、大広間に着く。
「開けなよ」
偉そうに言う雲雀に、仕方なく大広間のドアノブに手をかけて。
観音開きのそれを、ぐっ、と開いた。
『獄寺君、誕生日おめでとう!!』
「……………………え?」
鳴り響くクラッカーの音、十代目、守護者、ヴァリアー、部下…みんなの笑顔。
きらびやかに装飾を施された部屋の中、何が起きたか理解出来ない俺は、ただポカンとするだけだ。
「獄寺君、改めて今回はお疲れ様!!間に合って良かったよ〜」
「え、ぁ、」
「オレ達も出来る限り急いで帰ってきたんだぜ?」
「極限、間に合って良かったのだ!!」
「獄寺氏、大丈夫ですか?」
「クフフ、僕も今日の為に体力を温存し、準備をしてきたのですよ」
「はやと…誕生日、おめでとう」
「君、バカみたいな顔をそろそろ元に戻しなよ」
十代目の笑顔。
そして、山本、笹川、ランボ、骸、クローム、雲雀。
みんな遠方にいたはずなのに、どうやって集まったんだ?
「驚かしてごめんね、獄寺君。前に言ったでしょ?獄寺君の誕生日、何かやれたら良いねって」
「あ、でも…」
「タイミング悪く長期戦になっちゃって…ザンザスが無理矢理敵のボスを連れてきてくれて、早期解決出来たんだ。一つ借りが出来ちゃったね」
「!!」
疲れた顔は、やはり無理していたのか。
ザンザスをちらりと見れば、どかりと椅子に座ってワインを口にしていた。
あのザンザスが、俺の誕生日パーティーの為にそんな大変な事をしてくれたなんて。
驚きが多すぎて、色々な事についていけない。
「あ、獄寺君へのプレゼント、あっちにあるよ」
「プレゼント、ですか?」
十代目が指差す方向を見れば、山のように積まれたプレゼントが見えた。
箱には孔雀の羽に王冠モチーフの飾り、小さな本物のカエルに鮫のシール、カミナリマーク、そして]の文字の書かれたカードが付いた物が混ざっている。
あぁ、あれはそういう事だったんだ。
「オレのは死ぬ気の炎だよ」
「オレは犬と燕のマークなのな」
「オレのは極限だ!!」
「オレのは、葡萄の飾りです」
「僕のは槍と六のマークですよ」
「私のは、眼帯のドクロ」
「僕は鳥とハリネズミのシールだよ」
大小様々なプレゼントには、言う通りの目印が付いていた。
見分けがつくように付けたというそれは、それぞれの特徴を表していて妙に面白い。
というか、戦闘中という状況下でも俺の為に早期に決着をつけさせたり、急いで帰ってきて、こんな風に準備したり、プレゼントを用意してくれたり。
有り得ないだろ?
なんて思うけど、でも凄く凄く嬉しくて。
「ありがとう……!!」
楽しげに笑うみんなに、有り得ない程の幸せに。
俺も、笑顔でそう返した。
++++++++++++
獄寺君、誕生日おめでとおおぉ!!
不調なのがよく分かる文章ですが、やっぱり獄誕は書きたかった!!
今年はみんな…主にヴァリアーに愛されてもらいました。
戦闘が長引いて、獄寺の誕生日パーティー出来ねぇじゃねぇかコノヤロー!!
なんて状況なら、マジでザンザス様はやってくれると思います(苦笑)
しかしキャラクター掴めてないなぁヴァリアー…
20110909
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