小話(リボーン) 嘘から出た幸せ(リボ獄) リボーンさんがアホです 「獄寺君」 学校からの帰り道。 ちょっと寄り道した公園で十代目は急に俺を呼んだ。 「なんですか十代目?」 「獄寺君ってさ、最近好きな人出来たの?」 「…え?」 瞬時に頭が真っ白になる。 「この頃、時々上の空だしどこかぽぉっとしてるからさ」 「え、えぇぇあの、ちょ」 「悩んでるっていうより、なんだか幸せそうな気もするから恋患いかなって」 十代目は俺の様子に笑いながら話しを続け、最後にこう付け足した。 「獄寺君が良ければ話してよ!俺も協力するからさ」 「…あうぅ」 笑顔が眩しすぎますよ十代目。 こんな笑顔を見せられ、あまつさえ協力するなんて言われたら、答えないわけにはいかない気がしてくる。 「…笑いませんか?」 「笑わないよ」 「…相手が誰だろうと、気持ち悪がりませんか?」 「恋するのは自由なんだから、気持ち悪がったりしないって」 「…………」 「名前が言い辛かったらどんな人か教えてよ」 「…………ううぅ」 どちらにしろ、このまま話さないと、多分解放してくれないだろう。 俺は十代目の言葉を聞いて観念し、口を開いた。 「髪が、黒くてですね」 「うん」 「いつも黒い服装で、ですね」 「うんうん」 「それで、めちゃくちゃ強くて、かっこよくて、でも可愛くて、素敵で、銃の扱いが上手くて………と、とにかくカッコイイ方なんです!」 「そんで、おしゃぶりを持ってるんだ」 「は、はい…それによるかっこよさとのギャップがまた好きで………!?」 十代目のおっしゃられた言葉に流され喋っていた事に気付いたがもう遅い。 「獄寺君の好きな人って、リボーンだったんだね」 顔から火が出そうだ。 「す、すみません十代目!十代目の師匠にこんな気持ちを抱いて…しかもリボーンさんはまだ赤ん坊だというのにッ」 恥ずかしくて仕方がなくて俺は地面に膝をつき謝り続けた。 十代目はそんな俺の頭を撫でる。 「外でそんな事しないでよ獄寺君。それに謝る必要無いって」 「うぅ……」 十代目、なんてお優しくて心の広い方なんですか。 普通、こんな恋の話をされたら気持ち悪がるはずなのに。 「そっか、獄寺君はリボーンが好きなのか…」 「い、言わないでください十代目!」 大きな声で言われると恥ずかしい、と抗議すれば、十代目はごめんごめんと謝って。 そしてポケットから携帯電話を取り出した。 あまりに急の出来事に驚く俺をよそに、十代目はどこかに電話を掛ける。 「あ、リボーン?」 「!?」 十代目の口から出た名前に心臓が跳ねる。 十代目はそんな俺の状況を無視してとんでもない事を言った。 「今公園にいるんだけど、獄寺君来週結婚するんだって」 「………へ」 俺が結婚? 「相手?なんかイタリアの有名な家のご令嬢だって。え、なに?…うん、うん……分かった」 身体が石のように硬く動かない。 気付いた時には、もう十代目は電話を切っていた。 「さ、獄寺君隠れて」 「へ、え、い、今の」 「大丈夫だから、早く隠れて」 どこが大丈夫なのだ。 わけが分からないまま、結局何も言えずに木の陰に隠される。 十代目は俺が隠れたのを確認してからベンチに座られた。 と同時に猛スピードで緑色の飛行機が飛んで来て、公園の中央に停車した。 中から出てきたのは紛れもない、リボーンさんだ。 「早かったねリボーン」 十代目はニコニコとしている。 それに比べ、リボーンさんはいつもの姿からは想像も出来ないほどに息を切らして、汗だくだ。 「つ、ツナッ」 「リボーン落ち着いて」 「お、落ち着いていられるか!!獄寺が、ごくれ、ごくでらがあぁあぁぁあ」 「いやだから落ち着いて」 十代目がたしなめるが、リボーンさんは切迫詰まった様子で慌て続けている。 こんな姿初めて見た。 「ご、獄寺の家に行くぞツナ早くしやがれダメツナお前馬鹿だろツナ」 「馬鹿はリボーンだよ」 十代目、リボーンさんに馬鹿とか凄いですでも言っちゃいけません! 俺はどうすれば良いか分からず、とりあえず心の中で突っ込む。 目の前で好きな人の意外な一面が見えて、焦ってもいるんだろう。 「イタリアで式を挙げるらしいから、多分その準備で忙しい………って、リボーン何そのライフルやらトゲトゲのボールは」 十代目の言葉に驚き、気になって恥ずかしいがちらりとリボーンさんを見る。 そして噴いた。 リボーンさんの今の姿は、敵の中枢に一人で立ち向かう半人前のマフィアみたいだ。 無駄に大量の武器を背負い結局使い切れずに負けるタイプ。 まぁ、リボーンさんなら全て使って敵を一掃出来そうだが。 「獄寺の家に突撃し、相手の情報を聞き出し、イタリアに行って根絶やしにしてくる」 「………アホでしょ」 「うるせぇ俺はやる!」 そう宣言すると、リボーンさんは十代目を置いて歩き出した。 十代目は呆れた様子で声をかけている。 でも、何故リボーンさんはこんな事をしているんだろう。 「止めるなツナ」 「でもリボーン、そんな事したら獄寺君に嫌われちゃうよ?」 「…………ッ」 リボーンさんの動きが止まった。 俺に嫌われる事になんの問題があるというのだろう。 師匠として困る事でもあるのだろうか。 そんな風に考えていたが、答えはさらりと出てきた。 「獄寺君の事、好きなんでしょ?嫌われたら元も子も無いじゃない」 「…そうだな」 …………え? 「好き?リボーンさんが、………俺を?」 「!?」 「あ、出て来ちゃったんだ獄寺君」 何がなんだか、全てが信じられなくて。 とにかく木の陰から出た瞬間のリボーンさんの、あまりに驚愕した表情が面白くて。 思わず肩の力が抜けてぷ、と笑ってしまった。 それに対し、リボーンさんの顔が凍る。 「つ、ツナこの状況は一体何なんだ」 「俺がリボーンを騙して告白させたって感じ?」 俺の気配に気付かなかったリボーンさんは、魂が抜けたようによろよろとベンチに倒れた。 最強のヒットマンであるリボーンさんも人間なのだ。 「隠れててすみません、リボーンさん」 「ごく、でら」 「でも俺、すっごく嬉しかったです」 「………本当か?」 「はい」 「俺の気持ちはライクじゃなくて、ラヴだぞ?気持ち悪くないか?」 「それ、俺が十代目に聞いた事です」 「?」 「気持ち悪いわけないですよ。俺も同じですから」 そうにっこり笑って、リボーンさんの目の前にしゃがみこむ。 今までこんなにもリボーンさんの近くに来た事はあっただろうか。 いつもドキドキして、なかなか話せなくて。 直接指導してもらえないのが寂しくて、更に避けていたっけ。 それが今や、目の前でぐったりするリボーンさんの頭を撫でたいと思ってる。 「一体どういう事だ?というかお前結婚は?」 「お話しても良いですが、俺のお願い先に聞いていただけますか?」 「何だ?」 「抱っこして、頭を撫でさせてください」 「………良いぞ」 「ありがとうございます」 帽子で表情が見えないが、耳が赤いのが見えるだけで可愛らしい。 許しを得たので抱き上げれば、ぎゅ、と服を掴んでくれる。 「良かったね、獄寺君」 「はい!ありがとうございます」 これから、俺の結婚の誤解を解いて、きちんと気持ちを伝えよう。 考えただけで幸せになれて俺はクスリと笑った。 ++++++++++++ 振り回されリボーンさんは氷見の好みです。 本当はツナも獄が好きだったりするとか、リボーンさんから毎日のように獄への恋心について相談されてたりとか、裏ネタがありますが話に盛り込むと長いので無視しました。 別の話で書けたらそれはそれで楽しそうだな〜(^O^) そしてリボーンさんがまず一番に気付くべきは、獄がまだ結婚出来る年齢じゃない事です(笑) これ、upしてないよね…? 20110815 [*前へ][次へ#] |