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小話(リボーン)
彼の死因(雲獄)
「隼人、何やってるの?」

応接室に来た隼人は、そのままソファーに座り黙々とノートに何かを書き込んでいた。
横から覗き込むと、それはどうやら数学のなにからしい事が分かる。

「十代目の為に試験対策ノートを作ってるんだ」

十代目という名前が出て、体がピクリと条件反射で動いた。
こんな所でまで他の男の事か、なんて言いたくもなるが、ぐっと我慢する。

「随分と頑張るね」

「あったりめぇだろ」

ホント、何故あんないつもは弱い草食動物なんかの為に。
そんな意味もうっすら盛り込んでみたのだが、隼人には届かなかったようだ。
元気にそう答えられては、何も言えない。

「…ねぇ、隼人」

「なんだよ」

そのまま彼が作業する姿を眺めていたが、やはりつまらない。
ふと、欠伸が漏れる
あぁ、今日は朝から忙しかったんだっけ。
それでやっと一息ついて、彼が来てくれたと思ったら十代目の為だの何だのと。
なんか、落ち込むというかなんと言うか、





「…僕ね、死にたいんだ」






「………は?」

不意に、そう言ってしまった。

「僕はね、人間の死は生命の死以外にもう一つあると思うんだよ」

「………」

「それは、『努力をやめた瞬間』だと思う。生きる事の努力、ご飯を食べる事の努力、勉強をする努力、それら全てをやめた瞬間、人間は心臓が動いていたとしても死ぬと思うんだ」

我慢をやめた時も、というのは口から出ない。
そのままただ淡々と自分の意見を言う中、隼人は静かに聞いてくれる。

「………で、お前は死にたいと?」

話が切れたところで、隼人が一言言う。

「うん」

僕はつい、それに答えてしまった。
その返答に、しばし考え込む隼人。
なぜ、あんな事を言ったのか。
いっそ笑い飛ばしてくれれば良かったのに。
なんて、気が付けば言っていた言葉がとても恥ずかしくなっていたのだが。

「…たく、しょうがねぇな。ほら、膝かしてやるから寝ろ」

…どうやら、状況は随分美味しい方向に流れてくれたらしい。
僕、そんなに眠そうな顔してたのかな。
それとも、隼人には見抜かれていたのだろうか。
僕の気持ち、寂しさ。

「…消しゴムのカス飛ばさないでね」

「飛ばすかよ」

どちらにせよ隼人の膝が温かくて、そのうちとろりと視界が溶けてきて。

「お疲れ様」

隼人の手が頭を撫でて、それが物書きを中断してくれた右手だと分かって。

「………ありが、と…」

ほんわかした幸せを感じながら。
僕は、夢と言う名の死の世界へ落ちていった。





++++++++++++

雲雀さんが言った事は、氷見がふと思った事だったんですが。
それを話に盛り込もうとしたら、おねむな雲雀さんが獄の気を引きたいだけになってしまいました(苦笑)

てか、この言葉誰か言ってそうですよね…なぜふと思い出したのか謎だ(^^;)




20110716

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あきゅろす。
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