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短編+リク(00)
執事ネタ【アレ←ニル】

「…ま、……ニール様」



朝は鳥の囀りと、それより甘く俺の名前を呼ぶ声で目を覚ますのが好きだ。




***



「ん……」


「おはようございます、ニール様」
サイドテーブルに温かい紅茶を置きながらはにかむように微笑むのは、俺の執事のアレルヤだ。

「おはよう、アレルヤ」

アレルヤは小さい頃からずっと一緒で、生まれたその時から俺の側で一生を終えることを決められた存在。

「まだ、お疲れの御様子ですね」
「ああ……夕べも遅かったからな」
まだ疲れの取れない目頭を押さえる。
別室のデスクの上にはまだファイルが何冊か広げられたままのはずだ。
侯爵家の血筋といっても、甘えたくはない。

俺は素肌にかかる髪をうっとおしげに掻き揚げてから、アレルヤの差し出す紅茶を一口飲む。
「……美味いな」
調度良い温かさの紅茶のおかげで、段々と目も覚めてきた。
「ファーストフラッシュが手に入りましたので」
「そうか」
それは美味しいわけだ。

紅茶を半分程飲んで、ベッドから起き上がるとシーツが床へと滑り落ちる。
「シャワー浴びてくる」
「お着替えは御用意してございます」
「有り難う」
何も身に着けていない身体に、アレルヤがバスローブを着せてくれる。
バスルームは部屋の中にあり、歩いて数歩なのだから裸でも良いのに相変わらず細かい奴だ。
このバスローブも数秒後には脱ぐことになるのに。

俺は几帳面に畳まれた着替えを横目で眺めて溜息を吐いた。

出て来る頃にはさっきより濃くて熱めの紅茶がアレルヤと共に待っているだろう。



***


「おはよう、ニール」


「おはよう、ライル」
キッチリと着替えてリビングへと行くと、そこには既に弟のライルが起きていた。
頬に唇を落とすと、微笑んでキスを返してくれる。
「今日は良い天気だから、テラスで食べたら?」
そう言われたけれど、俺はくっつくようにライルの隣に座る。
すると、ライルは笑って再度頬に口付けてくれた。
「ライル、朝飯は?」
「先にいただいたよ」
いつもライルのほうが俺より起きるのは早い。
別に俺が寝坊をするというわけではなく、早起きはライルの性分らしい。

一通りの会話が終わると、邪魔をしないように待っていたアレルヤがライルに頭を下げた。
「おはようございます、ライル様」
「ああ」
ライルは俺には笑顔で挨拶してくれるが、アレルヤには軽く頷くだけ。
それもいつものことだ。
けれど自分には関係ないこととはいえ、いつも少しだけ悲しい気持ちになる。
ライルを通して、身分の違いを認識させられるから。


「ニール様?」
「ニール?どうした?」

俯いていた俺をアレルヤとライルが心配そうに見ているのに気付いて我に返る。
「ね、眠くて」
俺は慌てていつもの様に笑って言った。
「今朝はワッフルにしてくれ」
「畏まりました」
「玉子は二個で、スクランブルで」
「承りました」
俺のリクエストをシェフに告げるためにアレルヤはリビングから出ていった。


「……………」
一瞬、姿が見えなくなるだけで不安になる。
思わず、アレルヤが去ったドアを見つめてしまった。

「相変わらずべったりだな、兄さんは。アレルヤに」
「うるせぇ」
ライルに見られていたとは思わなかったから顔が赤くなる。
「ハレルヤは?」
「さあ?」
綺麗にアイロンのかかった新聞を読みながら、ライルは短く答えた。
「俺の靴でも磨いてんじゃないの?」
「ふーん」
ハレルヤはアレルヤの双子の弟で、ライル専用の執事だ。
ライルはわりと割り切るタイプで、小さい頃からあまりハレルヤと主従以上の関わりを持たない。

命令と絶対服従、それが彼らの関係だ。

パリッと乾いた新聞紙のアイロンかけも、ハレルヤがしたのだろう。
一度面白そうだからハレルヤに『やらせて』と言うと『お前は俺を殺す気か?』と言われてしまった。
ハレルヤは、二人きりのときは友達のように接してくれるから好きだ。
もしかしたら、唯一俺が甘えられる存在かもしれない。


でも、ハレルヤはライルの執事で。
俺の執事は、アレルヤで。


俺が好きなのは、アレルヤなのだ。
ハレルヤのことを特別に好きになれたら良かったのに。


アレルヤでなければ駄目なのだ。


「なあ……ライル」
「んー?」
「執事って、なんだろう」
そう聞くと、ライルは眉をしかめて新聞から目を離し俺を見た。
「またそれ?」
「……………」
「まあ、slaveよりはマシなんじゃない?給料だって沢山払ってるし」
「ライル!?」
ライルは大きく溜息を吐いた。
「毎回怒るんだから、聞くなよ」
「う………悪い」
俺はぐったりとテーブルに顔を伏せて、目を閉じる。

生まれた時から決まっていることを、変えるというのは結構厳しい。

例えば、俺がアレルヤをデートに誘えばアレルヤが断ることはない。
しかし、それはデートとは言わない。
主人の命を受け、執事が付き従っているだけだ。

「俺は……アレルヤとは、友達でいたいと思う」

恋人なんて高望みしない。
気楽に、せめてハレルヤくらいには砕けた感じに会話が出来たらと願う。
アレルヤ無しでは何も出来ない俺に、そんなことを言う資格はないけれど。


「ニールは、それで良いんじゃないかな」
「え?」
溜息が降ってくるかと思ったら、ライルは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「頑張りなよ」
「おうっ」




「……アレルヤの理性がいつまで持つか楽しみだな」



ポツリと呟いたライルの言葉はニールの耳には届かなかった。









-------



ハレライは(ニールが気付いてないだけで)ベッドの中では下剋上だったり、バスルームに着替えをわざと用意しなかったり(笑)


あれ?
もしかしてアレ←ニルって珍しいかも(おい)




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あきゅろす。
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