金
1.
「あら、珍しく今日は仕事が捗ってますね」
執務室に入って来たホークアイ中尉は、せっせっと目の前の書類を片付けていく私の様子に目を丸くし、遠慮なく言葉を続けた。
「雪でも降ってこなきゃ良いですけど……」
「……ふっ…今の時期に雪が降るなんてそんな非常識な……」
苦笑いしながら、書類から顔を上げると、ホークアイ中尉は、困惑し、声も出ないという態で窓の外を指していた。
「??」
私は立ち上がり、ホークアイ中尉の目線の先を視ると、なんと雪が降っていた。
―…いや、これは…―
良く視るそれは金色に輝いていた。
金色に輝くこの雪のようなもの…
「…っな…?」
慌てて執務室の窓を開け手を差し出す。
掌に舞い落ち、ひんやりとした感触を残し、水に変化したそれは、確かに雪だった。
「これは…どうなってるんでしょう? 大佐…」
いつの間にか窓際に立っていたホークアイ中尉は、私と同じように手を伸ばしたまま聞いてきた。
―――その時―――
『……大佐』
エドワードの声が聞こえた気がして振り返る。
しかし、そこにエドワードの姿がある訳がなく…
―――?
『―…大佐』
まただ……!!!
何時も何時もエドワードの事ばかり考えている所為で幻聴を聞いているのか……?
「大佐?」
ホークアイ中尉の声に我に帰る。
「………何故、泣いておられるのです?」
「何を言って…」
言いながら自分の頬に触れると、確かに濡れていた。
どうしたというんだ?
私には、自分の涙の理由が解らなかった。
なぜなんだ?
この半身をもぎ取られたかのような空虚感は……――?
「―――エドワード?」
さっき、確かにエドワードの声がした。
エドワードの身に何かあったのでは―――?
そう考えだした途端、急激な不安が押し寄せて来た。
……トゥ
―――トゥルルルル…
「!!」
タイミング良く(悪く)なった内線のベルが、私を跳ね上がらせる。
「はい、こちら執務室です」
ホークアイ中尉は素早く電話を取り応対した。
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