【朧月】
8
「やめろッ…──!! ぁ、うっ」
抵抗してるのは、言葉だけだった。
大佐の舌がケツの割れ目を這い擦り回るヌメヌメした感触。舌が触れた熱い部分から水分が熱を奪い、みるみる冷たくなっていく。
「…‥‥ッ!! はっ、あぁあ……!!」
「大分濡れてきたか?」
そう言って大佐は自らをオレの中に侵入させた。
「───ッ、ハッ、ああぁ──!!」
オレの激痛による絶叫は、大佐によって塞がれた。
その後、大佐はオレを玩具(おもちゃ)の様に、貪り尽くした。
それは、今に至る。
────────────
イヤな事を思い出してしまった。
漸くオレは泥だらけの躰を起こす気力が戻った。
アルが心配するから、こんな姿でホテルには戻れない。
考えた末、もう一度軍司令部に戻ることにした。
軍支給の着替えを借り、脱衣所に備え付けてある洗濯機に身に着けていた服を突っ込むと、シャワー室に入る。
広く通路がとられ、その脇に辛うじてプライバシーが守られる薄い板で囲まれた個室が並ぶ。
オレは一番奥のシャワー室へと入り汚れを落とし始めた。
石鹸を擦り付け、身を清める。
「──…‥っ!!」
洗い終え、シャワーの蛇口を捻り湯を止めた瞬間、シャワー室の扉が開き、身を固めた。
誰だ──?
オレが警戒したのは、極自然だったと思う。
入ってきた人物はシャワーを使うでもなく、通路を歩き始めた。 まるで、誰かを、探してるみたいに。
仕切りの板は、外からでも中の人物の膝下は見える様になっていた。
その隙間から外に立つ人物の軍服が揺れ、立ち止まった。
「鋼の?」
大佐──!!??
ななななななんで!!?
「君が、戻ってると聞いてね。多分此処だって思ったんだ」
返事もしてないのに、大佐はオレと確定し、話を続けた。
「何しに来たんだよ?」
声を押し殺し訊ねた。
さっき、思い出してしまったあの事も手伝い、感情的になっている様だった。堪え切れず……
「何だよ……? アレだけやって足りない訳?」
言ってしまった。
「…‥、其れだけ悪態をつけるなら心配ないな」
大佐の言葉が上手く呑み込めない。
──心配してくれてた?
オレを態々探しに来たのか?
思わず胸が熱くなる。
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