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【朧月】


「…‥──!?」

 イきっぱなしの状態が続いた疲労感から、大佐の腕の中にぐったりと身を託した。
 もう目を開けるのもしんどい。
 全身が痺れていて動かないオレの顎のラインを撫で、押し上げ、大佐はキスをした。
 信じられないくらい柔らかな、優しいキスが幾度か降ってきた。

「まだ、ぐったりするには早いよ……。鋼の」

 キスとは裏腹の冷徹な声に身が震えた。
 確かに衣服に汗がたっぷり染み込んで体温を奪っていたが、この震えは決して寒いからでは無く。その時オレは野生動物の様に身の危険を感じたのだ。

「これ以上、何する気だよ?」
「……随分不躾な質問だな? 決まってるだろう?
次は、私が良くなる番だ」
「──‥‥?」

 全く訳が判らない。只、唯一判るのは、この何とも言えぬ恐怖。
 なのに、細胞ひとつひとつが固まってしまったかの如く動けない。

「さあ、力を抜きたまえ。後が辛いぞ」

 何がなんだか判らないオレの思いを知ってか知らずか、大佐は愉しそうに喉を鳴らし小さく笑うと、肛門の周りを指で撫でた。

「な……!?」

 余りに突然の行動に、パニック状態で躰を跳ね上げさせる。

「何すんだっ!! このっ…変態っ!!」
「おや、上官に向かって何て口の聞き方だね?」

 からかう様な軽快な声色。狩りを愉しむ獣の声を聞いた気がした。こねこねと揉み解す動きは更に加速した。
 何とか逃れようと、腰を動かし藻掻く。けれど、大佐にすっぽりと包まれた躰は、ビクともしなかった。

「まだ、抵抗する元気があるか」
「──!! ゥク……!!」

 途端、指がめり込む。肉が引き裂かれる痛みに溜まらず声を出す。

「力を抜きなさい。鋼の」

 力を抜けって言われたってそう簡単に抜けるかっ!! 脂汗が滲む程の痛みに顔を歪め、堪える。

「……ッ ……むから、止めて。ィ──、テェ……」

 もう、か細い声で訴えるしかなかった。口惜しいケド、頼むしか無かった。

「直に良くなる」

 どうやら、止めてくれる気はないらしい。奥歯を噛み締め、情けなくて涙が出た。
 耐えられず、嗚咽が洩れる。

「…‥そんなに痛いかね? 仕方ない」

 呆れたみたいに溜息を吐き、指を引き抜くと、オレの腰を掴み躰を横にした。

「…‥──!?」

 尻に顔を埋め、無理矢理指を入れていた箇所を舌で舐め始める。

「ひゃっ!?」



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