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【朧月】


 まるで、連行される罪人の気分。
 大佐の目的は解ってる。
 体に触れはしないものの逃がさぬ様にオレの直ぐ横に位置し、歩調を合わせ歩く。

 オレ達が向かうのは、レストランでも…、ましてや定食屋でもない。
 連れられているオレさえ、何処に向かっているのか判らない。
 今日は、何処に連れていかれるのだろう?

 そんな事を考えていた為、隣で歩を進めていた相手の腕を上げる動作にビクッと躰を強張らせた。
 そんなオレを見遣ると、口許に微かな笑みを浮かべ、軍服の胸ポケットから懐中時計を取り出し時刻を確認すると溜め息を吐いた。

「ふむ‥、鋼のが手間を取らせた所為で時間がなくなってしまったな」

 そう言い、チラリと目配らせしたかと思うといきなり大佐に腕を引かれ…──。路地裏へと入っていく。

「…‥っ大…‥!」

 有無も言わさず、どんどん人の行き来も無さそうな、ゴミや、汚水で汚れた道とも呼べない通路を歩いていく。

 端まで行き着くと、やっと大佐の手から解放された。

 大佐は何の言葉もなくオレを壁へと押し付け、そのまま荒々しく口付けてくる。




「──‥‥ンンッ‥!」
‥んぁ…っ、や‥‥」

 耳障りな自分の声に寒気がする。信じらんねぇ‥。

「とても嫌そうには見えないが…‥、ホラ…」

 ヌルリと、オレの中から抵抗なく出入りする大佐の長い指をまざまざと見せ付けられ、目を背けた。

 下半身だけを晒すオレと、上着すら脱いでいない大佐。
 そんなのいつもの事なんだけど……。

「ん‥ンン‥う‥‥!」
「声を出したまえ、鋼の」
「ぃ……ヤダ‥‥」

 抵抗を見せると、大佐の指がオレの奥深くを荒々しく掻き回す。薄暗い路地裏にグチュグチュと水音が響く。

「あぅッ…!…──ィ‥‥アァ…ッ」

 思わず漏れ出す自分の声を自分の手を咬み、止める。

「強情だな、君は…」

 背後から攻め立てる大佐は、体重を預けていた壁からオレの体を引き離すと、唇を割り、深々と舌を差し入れ。

「むう…‥っ!」

 指は、今まで触れずにいた場所を擦り上げ──、瞬間、唇を離し。

「ひゃ‥アァァ…!」

 そんなにオレの声、聞きたいか?


 愛してもいないクセに……!

「鋼の、もっと私を感じてみろ‥…!」



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