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ツナガリ


「大佐ね…、今日は風邪で病欠って事にしたのだけれど…
本当は、違うのよ」

 其処まで話すと、中尉は溜め息を吐き、頬に手を当て、困ったわ…と呟いた。

「大佐から、家に電話があって…酷く泥酔している様だったのよ。そんな調子で出て来られては、執務に支障をきたすから来ないでくれって言ったんだけど…」

「……はあ…」

 普段の中尉からは、全く想像出来ない喋りっぷりにオレは驚いた。しかも、ロイが泥酔…!?

「大佐はああ見えて、仕事に誠実な方なのよ。長年大佐の下で働いてきたけれど、こんな事無かったもの…」

 そんな事……、知ってるさ。
 確かに、何かと理由を付けてサボりたがるけれど、仕事の期日はきちんと守っているし、志しは高いし………。
 ……って、なんで中尉に対抗心燃やしてんだ、オレは?
 アホか………。

「ねぇ? エドワードくん、何か知らないかしら?」

「……へえ!??」

 一人悶々と思考を廻らせていたから、急に中尉に質問され、ビックリして、飛び跳ね、変な返事をしてしまった。

 その行動で中尉の眼は確信の色に光った。

「………何か知ってるのね?」

 掌に汗が滲んだ。

「…え、いや、オレは……何も………」

 ヒドロモドロに弁解しても、余計に疑惑の眼が向けられているのが解り、中尉の顔が直視出来なかった。

「言いたくないのね?」

 言いたくない………。
 その言葉に素直に頷けたら、どんなに楽か……。
 中尉の視線が痛い。
 蛇に睨まれた蛙状態だ。

「……なんて、本当は解ってたわ」

 中尉の言葉に驚いて、顔を上げると、其処には苦笑している中尉が居た。

「…この間の飲み会で、大佐、酔ってしまわれて……、貴方の事、自慢気に話してたのよ?」

「………え?」

 オレの……事を?

「めっきり女性の話も出なくなったし……」

「……な……?」
「大佐は、エドワードくんが本当に好きなのね」

 なんでオレにそんな話を…?

「…オレ、フラれたから…!」

 思わず、口に吐いた。

「大佐は…、貴方が男だろうと女だろうと好きだって、本当に嬉しそうに話してた…!
エドワードくんの全てが好きだって。エドワードくんだから好きだって…!」

 ひどく興奮した様子で、中尉はオレの言葉を遮る。オレは混乱した。何で、オレにそんな……?

 今更……。


「中尉…! もう終わったから!」

 もう…止めてくれ…!
 中尉には…関係ないじゃないか………!!

 ―……バンッ…!!!
 中尉は激しく机を叩くと立ち上がった。

「―…そんなに軽い想いだと言うなら…大佐は私が頂戴するわ…―!!!」

 ―――…………え?

 中尉は言い放ち、グッと俯いたかと思うと、何を言われたのか理解出来ないオレを置いて…中尉は部屋を飛び出して行った……。

 テーブルが……数滴の雫で濡れていた。

 中尉が出ていったドアは……キィキィと高音を立て、…………定期的に揺れている。




 ずっと……、想ってたのか…

 ぼんやりと………まるで映画のワンシーンを見ているかの様に………―――




 ――――……………。


 お似合いだと…―思った。




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あきゅろす。
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