ツナガリ 6 「大佐ね…、今日は風邪で病欠って事にしたのだけれど… 本当は、違うのよ」 其処まで話すと、中尉は溜め息を吐き、頬に手を当て、困ったわ…と呟いた。 「大佐から、家に電話があって…酷く泥酔している様だったのよ。そんな調子で出て来られては、執務に支障をきたすから来ないでくれって言ったんだけど…」 「……はあ…」 普段の中尉からは、全く想像出来ない喋りっぷりにオレは驚いた。しかも、ロイが泥酔…!? 「大佐はああ見えて、仕事に誠実な方なのよ。長年大佐の下で働いてきたけれど、こんな事無かったもの…」 そんな事……、知ってるさ。 確かに、何かと理由を付けてサボりたがるけれど、仕事の期日はきちんと守っているし、志しは高いし………。 ……って、なんで中尉に対抗心燃やしてんだ、オレは? アホか………。 「ねぇ? エドワードくん、何か知らないかしら?」 「……へえ!??」 一人悶々と思考を廻らせていたから、急に中尉に質問され、ビックリして、飛び跳ね、変な返事をしてしまった。 その行動で中尉の眼は確信の色に光った。 「………何か知ってるのね?」 掌に汗が滲んだ。 「…え、いや、オレは……何も………」 ヒドロモドロに弁解しても、余計に疑惑の眼が向けられているのが解り、中尉の顔が直視出来なかった。 「言いたくないのね?」 言いたくない………。 その言葉に素直に頷けたら、どんなに楽か……。 中尉の視線が痛い。 蛇に睨まれた蛙状態だ。 「……なんて、本当は解ってたわ」 中尉の言葉に驚いて、顔を上げると、其処には苦笑している中尉が居た。 「…この間の飲み会で、大佐、酔ってしまわれて……、貴方の事、自慢気に話してたのよ?」 「………え?」 オレの……事を? 「めっきり女性の話も出なくなったし……」 「……な……?」 「大佐は、エドワードくんが本当に好きなのね」 なんでオレにそんな話を…? 「…オレ、フラれたから…!」 思わず、口に吐いた。 「大佐は…、貴方が男だろうと女だろうと好きだって、本当に嬉しそうに話してた…! エドワードくんの全てが好きだって。エドワードくんだから好きだって…!」 ひどく興奮した様子で、中尉はオレの言葉を遮る。オレは混乱した。何で、オレにそんな……? 今更……。 「中尉…! もう終わったから!」 もう…止めてくれ…! 中尉には…関係ないじゃないか………!! ―……バンッ…!!! 中尉は激しく机を叩くと立ち上がった。 「―…そんなに軽い想いだと言うなら…大佐は私が頂戴するわ…―!!!」 ―――…………え? 中尉は言い放ち、グッと俯いたかと思うと、何を言われたのか理解出来ないオレを置いて…中尉は部屋を飛び出して行った……。 テーブルが……数滴の雫で濡れていた。 中尉が出ていったドアは……キィキィと高音を立て、…………定期的に揺れている。 ずっと……、想ってたのか… ぼんやりと………まるで映画のワンシーンを見ているかの様に………――― ――――……………。 お似合いだと…―思った。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |