これは愛だよ?
10
昨日、久礼は早退し一度も目を合わせることなく終わった。
そんな中迎えた翌日。
学校の中は何やら不穏な空気に包まれていた。
あぁ、わかる...この空気。――これはまた一人生徒が失踪した時のものだ。
ヒシヒシと肌に伝わる恐怖の声。
それがどこか俺は心地良く感じた。
クラスの近くの廊下を歩きながらもうSHRが始まっているのだろうか、と考える。
しかしそんなこともなく、突然、教室の扉が開き、ぞろぞろと人が中から出てきた。
「緊急の全校集会だって。ほら、あの生徒の失踪についての...」
同じクラスの友達がそう、俺に行った。
それに俺はこのことについて納得がいき、足早に鞄を机に置くと皆の後を追った。
「...いない」
追いついてキョロキョロとするがそこに、久礼の姿はなかった。
それでもしばらく探していると携帯のバイブがポケットの中で震え出した。
『やばいっ、バス乗り遅れちゃった!先生に遅れること伝えてもらってもいい??』
それは久礼からのメールだった。
それに対して俺は無表情のまま特に返信をすることもなく携帯を閉じる。
そして俺は前の方にいる担任の元へと走っていった。
全校集会が終わり、教室に戻ると席について深く息を吐きだした。
内容はとくに覚えていない。唯一覚えているのは一週間学校が休みになるということだけ。
あと、今日は二時間目の授業が終わったらすぐに下校できるということ。
今はもう一時間目の授業はないだろう時間だから実質、後一時間授業を受ければ帰れるということになる。
あぁ、だるい。気持が悪いんだ、早く帰ってしまいたい。
あと一時間の辛抱。そして俺は重い体を机に任せ、突っ伏した。
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