これは愛だよ?
9
「久礼と別れて」
ある昼休みのこと。
それは購買での買い物が終わり、教室へと歩いている時に突然現れた見知らぬ男子に言われた言葉。
「...何言ってんの?」
「だから、久礼と別れてって言ってるの。あんたが久礼と別れようとしないから久礼は僕と付き合うことが出来ないんだ!」
「...はっ?」
必然的に俺の頭の上には疑問符が浮かぶ。目の前のこいつは一体何を言っているんだ。
「久礼は僕とセックスした時、すごく幸せそうだったんだ。僕のことを最後まで熱い目で見ててさ、」
信じられない言葉を紡ぐ目の前の小柄な男。
俺は何も言えず、目を見開いて食い入るようにその話を聞いていた。
今日は3時間目あたりから久礼の姿が見えなかったが、まさかその時にでもこいつとヤっていたのだろうか。
「幸せそう...だった?好き、とでも言ってたのかよ」
声が震えそうになる。また、またお前は俺を裏切るのか。
「...ッ、言った...言ったよ!僕のことが好きだって!愛してるって!」
一瞬どもったが、そう男は言い切った。多分それは嘘。この男が見えを張っていっただけだ。
だけど、今の俺の状況ではそれを見抜くこともできずただ茫然としてしまった。
「..言った...のか、」
「そうだよ!だから、わかったなら久礼と別れて。それに僕なら久礼を繋ぎ止めておける。君とは違って、久礼を僕だけのものにすることができる」
「...」
「話はそれだけだから」
俺が何も言い返す暇もなく、いうことだけ言って男は去っていった。
憎かった。ひどく歪んだ感情が俺の中を支配する。
久礼があいつを好きだって?
...なら、あいつは消えてしまうのが一番だ。
俺はその背をずっと...ずっと見えなくなるまで睨んでいた。
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