■「めーちゃん・・・!!!どーしたの・・・!???」 ずぶ濡れになって現れた笹目を迎え入れたのは蘭姫だった。 ここは蘭姫たちの家。マンションの一角の早乙女家の部屋の一角。 「・・・・・蘭姫ちゃん・・・・。ごめんなさい・・・私”人魚姫”の練習につい雨の中で歌ってたらこんなことになっちゃったの・・・・」 笑みを作って返す笹目。もちろん蘭姫に返した言葉は嘘である。 「もう・・・!めーちゃんは”演劇”に夢中すぎ・・・!!!!待ってて・・・今タオルを持ってくるから・・・!!!!」そう言って蘭姫は奥の部屋に駆けて行った。 「な。俺についてきたらいいもんが見られんだろ?」 後ろに立っていたダイナが言った。 「俺についてきたらいいもん見せてやるぜ?」それは軽いナンパだったのかどうかは分からないが少々不安定になっていた笹目は家に帰りたい気持ちもあったがついその手をとってしまった。 「いいもの・・・って蘭姫ちゃんのことですか?」 居心地悪そうに目を伏せながらぼそりと笹目がそういうと。 「な、可愛い奴だろう?」と、あっけらかんとした笑顔を向けられた。 ・・・・・・正直どうしたらいいか分からない。 今この心境で蘭姫ちゃんに会って、下手な事が起きて傷付くような事をしてしまったらどうしたらいいんだろう・・・・・・・・笹目はそればかり気にしていた。大事な”お友達”を傷つけたくない。 でも今は・・・”泣き出しそうで演技が出来ない・・・・” 「・・・!めーちゃんどうしたの・・・!??」 ほろりと涙が零れそうになったところで蘭姫がタオルを持って差し出した。ソコにすかさず弟の乱鬼がタオルを持って笹目にダイブする。 「あ・・・こら!乱鬼(らんき)!」 蘭姫と同じ名前のソレは可愛いものと美人には眼が無いようだ。 本命は姉の蘭姫だがずぶ濡れになってもほのかにいい香りのする笹目に飛び込みたくなったのだ。 その瞬間。笹目からぽろぽろと涙が零れ落ちた・・・・・ 「・・・・蘭姫ちゃん・・・・・”恋”って・・・・良く分からない・・・・・・・・・・・」 それなりに整った顔をした形のいい笹目からは到底想像もつかないような歪んだ顔の涙だった。 それでもそれが何かを惹きつけるように。蘭姫も笹目を抱きしめた。 「めーちゃん・・・それは私も分からないよ、でも自分がその人を”好き”って気持ちは自分が一番分かってると思う・・・・・・・」そう言って蘭姫が自分がぬれることも構わず笹目の頭にタオルをかけると背の低い短い手で笹目を撫でようとしたのでダイナがソレを抱え上げて蘭姫に渡した。 ソレとはもちろん笹目の身体の事である。 「もー・・・!!!!お兄ちゃん!めーちゃんは今すっごくすっごく繊細な事で悩んでるんだからそんな真似しちゃだめでしょ!!!」蘭姫が笹目を抱きとめながらそう怒る。 「繊細ネェ・・・・・」そう言ってダイナはにやにやとこちらを見つめる。 「いいじゃねぇか初々しくて。お兄さんはそういうの好きだぜ」と。笑顔を向けられた。 何でこんな苦しい気持ちがいいものなのだろう・・・・・・・ 良く分からないと思いながらも笹目は蘭姫に抱きついた。 「私は・・・蘭姫ちゃんが・・好き・・・」 それは先日出合った”彼女”が私に言った物と同じものだった。 あの子も・・・”こんな感情・・・”だったのだろうか。 「私もめーちゃんのこと。好きだよ。」そう言って抱きしめ返す蘭姫。 その間に小さな乱鬼が挟まれている。 「・・・・・なかなかいい光景だな・・・・」 ニヤニヤと見つめるダイナに少々苛立ちを感じながらも笹目は暖かい蘭姫の身体に心地よさを覚えていた。 ■NEXT■ [*前へ][次へ#] [戻る] |