■その日笹目は祖母に携帯で連絡を入れて蘭姫の家に一日泊まることにした。 狭い布団の中で蘭姫と一緒に寝る。 最初に出た言葉は「ダイナさんって嫌な人ですね」 だった。・・・・・・自分らしくない。本来なら人を貶すような言葉は言わないと決めているのに。 だが蘭姫はそれに怒る事もせず笑い始めた。 「でしょ。・・・・でもあれでちゃんと私たちのこと。面倒見てくれるんだー・・・・・・」 天井に向かって手を上げる蘭姫。隣の部屋で寝るその兄の事を思っているのだろうか。 笹目は横向きに蘭姫のほうへと身体を向けて寝る。 「本当にいいお兄さんですね・・・・・・」今度は自然とそう出てきた。 「へへへ。そうでしょ?」 蘭姫が照れた様子でこちらに身体を向けてきた。 「でも私はね。もっともっと面倒見が良くて素敵な人を知ってるんだ・・・・・・・///」 そう言って頬を少し赤らめる。 「それはもしかして・・・先日言っていた”好きな・・・人”?」 「うん・・・・!・・・・・担任の”白刃先生”っていうんだ!」 担任と聞いて笹目は少々驚いた、流石に中学生と担任じゃその恋は実らないだろうと思いながら・・・ それでも・・・・・ 「蘭姫ちゃんも私と同じく・・・・・立場が上の”男性”を追ってるのですね・・・・・・」そういうと 「めーちゃんも、そうなの?」蘭姫が目をキラキラと輝かせながら言って来た。 それがどちらの”きじたか”さんかは分からないけれども・・・・・・・・ 「好きな人が居るんです・・・・・」笹目はこの非初めて正直にそう言った。 「そっか。めーちゃんも私と同じ気持ちなんだね」 そういわれていつも幸せそうに”好きな人”のことを話そうとする蘭姫の事を思い出す。 でも私はいつも自分のソレと比べてその続きを聞こうとはしなかった・・・ けれども。 「そうかもしれませんね。」今は蘭姫ちゃんのとなりで心のソコがぽかぽかと暖かいような気がしてくる。 この気持ちは何だろう・・・・・・。 「もし私が・・・あのダイナさんを好きになったりしたら・・・・蘭姫ちゃんはどう思う?」 試しにそう聞いてみた。 そしたら「絶対ありえないよ・・・!!!」と起き上がってそういわれた。 「それじゃぁ私が・・・・・・」 ”その白刃先生を貴方から奪ったら、貴方はどう思うのだろう・・・・!” そう思ったけれどもそれは言わない事にした。 笹目は”白刃先生”の事は知らない。けれども・・・・・もし私がソレを奪ったら蘭姫ちゃんはどんな気持ちになるのだろうか・・・・・・。 別に彼女を傷つけたいわけじゃないが。”蘭姫ちゃんならどうするだろう”不意にそう思った。 「もし・・・・」 「え・・・・・?」 「もしめーちゃんが。私と同じ人を好きで。・・・・・・その人がめーちゃんを選んだりしても。私は泡にはならないよ」 真っ暗な部屋の中。蘭姫がじっとこちらを見つめてきた。 それは・・・・・・ 手に持つ剣で私を刺し殺す・・・という意味だろか・・・・・・・・・。 人魚姫の本当のお話は王子を刺すか自分が泡になるかだと思う・・・だけれども 前に部長が「何で人魚は姫を刺して王子を奪わなかったんだろうな・・・」と言ってたことがあった。 それがずっと心に引っかかっていた。私の”人魚姫は”手にした剣を誰に向けるのだろう・・・・・・ そう考えていると蘭姫がソレに続けた。 「もし。めーちゃんが白刃先生を好きになって。そして白刃先生がめーちゃんを選んでも。私は私の好きな人が。他にもいろんな人に好かれて。幸せになってくれたらそれで嬉しいと思う。」 へへへ・・・・・・・ ”もしそうなったとしてもめーちゃんとは友達でいさせてね”蘭姫ちゃんははにかんでそう答えた。 あ・・・・・・ この子は”剣を捨てたんだ・・・・・”泡になることもなく・・・・・・人魚に戻る事も無く・・・・強い意志で闇の魔法に打ち勝ったんだ・・・・・・・。 「そういう・・・考え方もあるんですね・・・・・。」 「へへへ・・・・//」 きっとそれだけ彼女は”白刃先生”の事が好きなんだと思う。 それからきっと・・・・・・・・「私のことも好き?」もう一度確認したくてそう聞くと、蘭姫は「うん!」 と答えて微笑んだ。夜の闇がどんどん深まりお互いの顔も良く見え無くなって来たがきっと彼女は歩の笑んだのだとそう思う。 やっぱり私は・・・・・”蘭姫ちゃんを好き・・・”そう思っている間は”本当の自分になれる” そんな気がした。 「私にとっての王子様は蘭姫ちゃんなのかもしれないわね・・・・」 笹目がそう答えると。「物語には王子様は1人とは限らないからね」 そう返事が帰ってきた。 物語に・・・・王子様が、二人・・・か。 その日笹目は王子の相手、他国の姫が”王子に変って自分と結ばれるそんな”夢を見たという。 その後一人ぼっちになた王子は残された剣で自分を刺し、姫は人魚に舞い戻る。 ・・・・それでも王子になった姫との関係は・・・・変らず幸せに続くのであった。 ”明日・・・・・・・・学校で”彼女”に出会ったらこの夢の話をしてあげよう・・・・” その話を聞いて彼女はどんな顔をしてくれるだろうか。 私は貴方との友情は壊したくない・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・ううん。決めました。 今度は私が”部長から”彼女を奪ってみせようと思います。 ・・・・・・・・・・その上で・・・・やっぱり私は”鬼似鷹さん”が好きなんだと思う。 ・・・・・まだ完全に部長への想いはふっきれてはいないけれども笹目は少し心が軽くなったのを感じた。そして早朝早くに寝ている蘭姫にキスを落とすと彼女達の朝食とお弁当を作ってその部屋を後にした。 「よう。彼女。家まで送ってやろうかぁ〜・・・・・・?」 ロビーに下りるとダイナが車の前で待っていたが 「遠慮します。未来のお兄様。」 総冗談交じりの笑顔を見せて笹目はそこを後にした。 ■END■ [*前へ][次へ#] [戻る] |