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「どうかしたのか」
「う、ううん。何でもないよ。少し驚いただけ」
「驚いた?」
「そー。かぐちゃんが予想外に美人に笑うからなー」
「……は?」
「き、ききき気にしないで!嚆矢っ」
「はいやっさー」



嚆矢が音速で取り出したカードキーを光速で差し込み口に入れると、後ろに回った千里が俺の背中をぐいぐい押した。



「一名様ごあんなーい」
「い、いらっしゃいませー!」
「いや、千里の場合お邪魔しますじゃ……」



俺のツッコミは綺麗にスルーされた。



*****



「……もはや特筆するに能わず、だな」
「え?香黒君、なんか言った?」
「かぐちゃんは、金の無駄遣いって言ったんよー」
「さっきから思ったんだが、そのかぐちゃんって俺のことか?」
「とーぜん!」



せっつんにかぐちゃんなー、と紅茶をいれる千里と俺を順番に指しながら、嚆矢はからからと笑った。



「嚆矢、変てこなあだ名付けるの好きなんだ。嫌なら言った方がいいよ?」
「いや、大丈夫だ」
「そう?」



それならいいんだけど。
そう言って千里は俺達の前に湯呑みを置いた。

………ん?



「千里、」
「なに?」
「さっき、紅茶いれてたんだよな?」
「そうだよ」



もう一度、湯呑みを覗く。



「これ、緑茶……」
「ごめんね?僕お茶いれるの苦手で、いつの間にか緑茶になっちゃうんだ」
「もはやそれは苦手の域を越えてるぞ」



発酵させて烏龍茶にするならまだしも、戻して緑茶にするってどういうことだ。
嚆矢を見ると、何事もなかったかのように緑茶を飲んでいた。
倣って一口啜る。



「美味い」
「よかった」



にこりと笑う千里を見たら、この異常事態も、なんだかもうどうでもよくなった。可愛さは武器とはよく言ったものだ。


その後二人から聞いたところ、寮のみに限らず、どこもかしこもこの豪華さが普通らしい。
慣れることができるだろうか。少し不安だ。

因みに、やり過ぎって思うのもわかるけどね、と苦笑した千里も、仕方ないわなー、と笑う嚆矢も、聞いたところ二人とも汀国内の大手企業のご子息らしい。
何となくショックだ。

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あきゅろす。
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