04 「あ、そうそう。カフスも外しちゃ駄目だからね」 「……わかってます。まかり間違ってもこれだけは外しませんから」 「なんだかもったいない気もするんだけどね……」 「これが『普通』ですから」 汀人は髪も目も黒い。 そんな中、ほぼ純血汀人であるはずの俺の目は、近隣の国にも存在しない青色だった。 それを隠すため、佳さんに頼んでわざわざ目の色を変えるカフスを作ってもらった。 仁さんはもったいないと言ってくれたが、親や知人以外から異端児扱いされていたから、むしろこの状態は有り難かった。 カフスのせいか、少し髪が短くなった上色が黒い焦げ茶になってしまったが、まあ、許容範囲内だろう。 「まあ、これなら香黒君も安心して学園生活を送れるよね!外すと目の色が戻っちゃうからだめだよ?眼鏡も駄目だからね?」 「大丈夫です」 過保護気味の理事長に微笑む。 と、扉が二回軽くノックされた。 「お客ですか」 「うん、香黒君にね。校内案内のためにうちの生徒会長に来てもらったんだ」 わざわざ案内のためだけに呼んだのか。 その会長とやらに、非常に申し訳ない。 「失礼します」 部屋に入ってきた男と視線が合う。 相手の目が大きく見開かれた。 「……!!」 「え、知り合い?」 「いえ。初対面だと思いますが」 「本当に?黒渦君、知り合いなのかい?」 「…………………すみません。思い違いのようでした」 「そうか。それならいいんだけど」 まあ、知り合いだとしても変装してるからわかるはずないだろうけどね。 そう仁さんが小さく呟いた。 会長とやらは、難しい顔でこちらを凝視していた。思い違いと言いながらもまだ疑っているらしい。 だが、ばれてはいない。 ほう、と小さく息を吐いて、そっと男を伺う。 大陸の血を色濃く映したプラチナの髪と翠の目。整った顔。 間違いない。こいつは黒渦威月だ。 頭を抱えたくなる。 予想外だ。まさか彼が羽陽学園にいるとは思わなかった。 「香黒君。彼は黒渦威月君。この学校の生徒会長だよ。黒渦君。こちらは編入生の添鳩香黒君」 「初めまして」 「ああ。よろしく」 対面の挨拶をしながら、俺は早くも羽陽学園への編入を後悔し始めていた。 『ネコちゃんに不幸が訪れるわ……』 このことか。 <<>> [戻る] |