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あら?
俺様、なんか悪いこと言ったか?

一瞬、信長の顔が曇った気がした。
それは直ぐに、首に抱きつかれて見えなくなったが、気のせいだと片付けるのは、違うと思う。

「何でもない訳、ねぇだろ?」

優しく頭を撫でてやりながら、根気強く聞いていくことにした。でも信長は、首を左右に振るだけで、答える気はないらしかった。

さて、どうしたものか?
このまま抱くのは簡単だ。けれども、信長が俺様の何に引っ掛かったのか知りたい。

「か……陽炎?」

ぴたりと動きを止めた陽炎を不思議に思ったのか、信長が戸惑いながらこちらの様子を伺ってくる。

「た……楽しむんじゃ、なかったのか?」

おずおずと、けれど、どこか寂しそうに言った信長を見て、何となくその理由が分かった気がした。
多分、信長は自分の言った“楽しませて貰う”と言う一言に、引っ掛かったのだろう。

勿論、陽炎はそんなつもりで言ったわけではなく、ただお互いに気持ち良くなれれば、と思ったのだ。
あの一言が信長を落としたのは確実だ。

「あー……」

言い澱めば、信長はピクリと肩を震わせた。

そんな仕草も可愛いのだが、何に対してそんなに怯えているのか、陽炎には分からなかった。

「なあ、何にそんなにビクついてんだ?」

「別に、ビクついてなんか……」

そう言って信長は視線を下げる。
視線逸らして、俯いた時点で、肯定してるってことに気づいてないところも、可愛い。

「嘘つくんじゃねえよ」

「っ、……嘘なんかついてない!」

詰まった時点で嘘だろ。
そうは思っても、それを口にはしなかった。
このままでは、無意味に押し問答を続けるだけだと思った陽炎は、少し違う方向から聞き出すことにした。

「俺様がお前を抱く理由が知りたいのか?」

率直に言えば、腕の中の信長は固まったままピクリともしない。

こりゃあ……当たり、だな。
……ふむ。
確かに俺様は、信長を守護してるから抱く。
でも、理由がそれだけならば、態々相手の反応は気にしない。女ならまだしも、男の喘ぐ姿を見て何が楽しい。
当たり前だが、今まで何人か守護してきて、可愛いと思って抱く相手は、実は信長が初めてだ。

……ん?
相手の反応?
可愛いと思うから、信長を抱くのか?
守護してるからじゃなく?
………信長は男で、喘いで啼く声も可愛くて。
その声を、聞きたい?

自分の思考に、陽炎は少なからず驚いた。
今まで、男を可愛いと思って抱いたことは、一度もなかったのに、信長は例外であるらしい。

けれど、これではっきりしたことが一つ。
信長を大切にしたい。
己のせいで過酷な道を歩む信長を、少しでも癒したい。

そうか、信長に対するこの感情は……。

可愛いとは何度も言ってきたし、この感情を不思議に思っても深く考えたことはなかった。結果、信長に要らぬ不安を与えてきたのだ。

「なあ信長、確かに俺様はお前を守護してる。けどな、お前が可愛いから抱くんだぞ?」

ピクリと肩が反応したことで、正解だと思った。
気づいたばかりのこの感情を、正直に伝えれば良い。

陽炎は信長の頭を抱えて、優しく語り出す。

「俺様はお前を大切に思ってる。だから一緒に楽しみたい。お互いに気持ち良くなりたい」

「……大切?」

ようやく、信長の声で反応があった。

「そうだ。大切だから信長の反応が気になる。可愛いから抱くのであって、守護してるから抱く訳じゃない」

我ながら、見事な告白だと思う。
信長の耳が真っ赤に染まっているのを見て、満足感を覚える。そう。気づいていなかっただけで、大切に扱ってきたことは事実だ。

「信長から寄せられる好意は心地よかったし、俺様もそれに応えていたつもりだ」

「えっ!?こ、好意って……知ってたのか!?」

信長は驚いたように、勢い良く顔を上げた。
真っ赤に染まった顔がまた、愛らしい。

「気づかないとでも思ったのか?信長は結構、感情駄々漏れだぞ?俺様限定で」

これ以上ないと言うほど顔を赤く染めて、信長は口をパクパクさせている。

「すぐ赤くなるしな」

「うぅ……」

よほど恥ずかしかったのか、信長は唸りながら、顔を両手で隠してしまった。

「顔、隠すな」

陽炎は信長の隠れた可愛い顔を見るべく、手を外した。
すると、今度は顔を背けてしまう。

「ほら、こっち向け」

耳許で囁きながら、瞼や額、頬を口づけを落としていくと、ようやく顔を見せてくれる。
睫毛を震わせながら、その瞳は不安と期待に揺れていた。


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あきゅろす。
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