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堕ちた先には

「……煉……」


渚が小さく呟くと煉は視線を合わせ、穏やかに微笑んだ。


煉の顔を見たとき、一瞬体が震える上がるような無表情にみえたけど、今の顔を見ると気のせいだったのかなと思う。


煉にゆっくりとした手つきで髪を撫でられ、渚の頬が緩んだ。


「煉だよね…久しぶり…」


「うん、3年ぶりかな…」


「合わない内に煉変わったね…。なんだか、格好良くなった」


思わず拗ねた口調になる。


中学生の頃は、僕とあまり身長は変わらなかったのに、僕より大きくなった。
しかも、僕の場合、平均身長以下だし…。成績、運動も平均だ。
それに加え、母に似た女っぽい顔立ち。


渚とは対照的に、煉は端正な顔立ちをした父親に似ている男前だ。


本当は、僕が兄なのに、逆に見られてしまうんじゃないか…。


それよりも、兄弟と信じてもらえないかも。


なんだか、軽く落ち込む。


共通点は髪と目の色ぐらいじゃないか…。
双子といっても、二卵性だから多少なりとも、違う部分は出るかもしれない。でも、これではあまりにも不公平ではないかと少し悲しくなってしまう。


「ふふっ…、ありがと。渚は昔と変わらず可愛いよ」


「どうせ身長は平均以下ですよ!でも、これから伸びるからね!」


「はいはい、わかりました」


煉の笑い声が教室に響いた。


煉の温もりと柑橘系の香りが、僕の忘れている何かを思い起こしそうな気がした。


遠い記憶。


懐かしくて、切なくて、それでいて痛み、恐怖。


一瞬何か、脳裏によぎったが


第3者の声でさえぎられた。


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あきゅろす。
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