堕ちた先には 6 4限目の終わりを知らせるチャイムが鳴り、お昼休みを迎えた。 ほっと一息つき、教科書を机の中にしまっていると、ひときわ大きな声が聞こえた。 気になって横に視線を向けると、貴堂の机を取り囲むようにし、可愛らしい女の子達で人だかりができていた。 『ねぇ貴堂君、一緒にご飯たべよ』 『煉君は、どんな子がタイプ』 女の子達は我先にと積極的に話し掛けている。 こういうとき、女の子は何だか少し怖い気がするけど。 かなり格好良く、頭もいい煉は、転校初日から常に周りに女子生徒達がいて、人気があるようだ。 背が高くて、あれだけ格好良ければね。 対して僕は、可愛らしい顔立ちの母親に似てしまった為か、実年齢より幼く見えることも、よくある。 煉のような容姿が羨ましくもなってしまう。 せめて、もう少し身長が欲しかったな…。 煉を見つめながら、軽く落ち込んでいると透の弾んだ声がした。 「渚!お昼食べようぜ」 透はとても明るい声で満面の笑みを浮かべ、僕のサラサラの髪をかき回し、抱きしめられる。 透はなぜか僕だけスキンシップが激しく、迷惑なことにたまに力加減を忘れることがある。 「くっ…苦しいよ…透」 力加減のない透に抱きしめられ、さすがに本気で苦しくなってきた。 僕は透の軽く胸に手を起き、距離を置こうとした時、「離せ」と地を這うような低い声が耳に響いた。 横から腰を引き寄せられ、透から引き剥がされたかと思うと、温かい温もりと柑橘系の香りに包まれた。 誰……? 確認するため、顔を上に向けると、煉の顔があった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |