季節シリーズ
2
あの時、逃げた彼はその後、謝ってきたが僕から今までみたいにお金を出させる事が出来ないと判ると「誰が好きこのんでお前みたいな
奴を相手にすると思うんだ。金が引き出せなきゃお前なんか価値は無いんだよ!」と言われ、僕の前から去っていった。
それから僕はなるべく目立たないように暮らした。なのに美人だった母親に似ていたせいか声をかけられる確率が高くなった。
だけど男性しか好きになれない癖にその男性から声をかけられるのが怖くなってしまい、前髪で顔を隠すようにしていた。
蒼介さんに会ったのもその頃だ。
彼とは本屋で出会い、同じ作家が好きということで意気投合し僕にとって唯一の友人といっていい存在になった。
高校に入学してからは成績は上位をキープするようにした。それが父親から生活費を出す条件の1つだったから。
縁を切りたい息子でも未成年の間は切るわけにはいかない。ならばお金を出しても惜しくないと思わせるようにしろと言われた。
運動はあまり得意ではなかったから勉強を頑張るしかなかった。
蒼介さんは人を包み込むような雰囲気を持っていて僕に事情があることも感づいていたようだけど何も聞かないでいてくれた。
その優しさに僕もつい話してしまった。
「辛い事や悲しい事、幸せだなと思った事、何でもいいから人に話したい事があればいつでも聞くからな。1人で溜めこむなよ」
その言葉が嬉しくて思わず「お兄ちゃんみたい」って言ってしまい蒼介さんに髪の毛をグチャグチャにされた。
そんな生活をしていたから大輝から声をかけてきた時には本当にびっくりした。
「染矢って頭いいんだろ?ちょっと解らないところがあるから教えてくれないか」
ビックリしすぎて「なんで僕?」と聞いてしまった。
「クラスの奴が染矢に教えてもらったら解りやすかったって言ってたから」
大輝の答えは簡単で、あまりに簡単に言うからつい頷いてしまった。
それがきっかけで周りに人がいない時など勉強以外にも話すようになり僕は大輝に惹かれていった。
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