季節シリーズ
27.
やがて彼がバイトを始め、日が進んでくると少しずつ、本当に少しずつ変わってきた。
大輝は今まで通り、僕といる時間を取ろうとしてくれていたけど一緒にいても今までと違い、会話が少なくなった。
僕が話しかけようとしても資料を読んでいたりするとやはり遠慮が先に立ち、結局、話をしないという日も増えていき、たまに僕が話をしても
彼が聞いていないことがあったりした。
僕は大輝の帰宅時間にあわせて食事を作り、家に居る間は少しでも彼が寛げるようにして正体の掴めない不安感を胸の奥深くに押し込めた。
「染矢君、大丈夫?」
「え?」
「何だか元気ないし・・・・蒼介さんも心配してた」
大学でいつもどおり石川君と昼食を食べていた時、ふいにそんな事を言われた。
「大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね」
蒼介さんと石川君はあの食事会の後、付き合っている。その頃の僕は幸せそうな2人を見て羨ましいと思う事が多くなっていた。
「それはいいんだけど・・・・あのさ、桐原と上手くいってる?」
「え?どうして?」
「最近、桐原から何も言ってこないから・・・・前は頻繁に“今日の真妃の様子はどうだった?”って聞いてきてたのに」
「そんなに頻繁だったの?」
「うん。蒼介さんも呆れるくらい」
「なんか・・・・ごめん」
何だか申し訳なくなり思わず謝ってしまう。
「ううん、別にいいんだ。ただどうしたのか気になっちゃって」
「大輝、バイトが忙しいみたい。彼、やる時はやるタイプだからちゃんと合格するまで手は抜けないって言ってるんだ」
「バイトって家庭教師だよね?」
「うん」
「高校の後輩だったよね」
「・・・・よく知ってるね」
「蒼介さんに聞いた。それ、最初は蒼介さんにいった話だったみたいなんだけど性に合わないからって断ったら桐原にまわったみたい」
いつものことながら話の合間にどんどん、食事をすすめる彼に感心しつつ返事をする。
「そうだったんだ。知らなかった」
「桐原から聞いてないの?」
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