季節シリーズ
39.
「就活も無いし卒論も大体、纏め終わってるから空けられるけど?」
彼の質問に今度は僕が不思議そうな顔になったのだろう。大輝はフッとその端正な顔に笑みを浮かべると言葉を続ける。
「2人とも無事に就職が決まったお祝いをしようと思ってRホテルのレストランを予約したんだ」
「え?」
「俺はちょっと用事があるから外で待ち合わせしよう。予約は19時だからそうだな・・・・17時にしようか。場所は・・・・久しぶりに駅前のカフェにするか」
駅前のカフェは昔から待ち合わせによく利用してた場所だ。
有名店では無いけれど落ち着いた雰囲気の店で大輝はそこのコーヒーが好きで僕はそこの紅茶が好きだ。
大輝が飲むコーヒー豆を買いに1人でちょくちょく行ってはいたけれど、2人で待ち合わせなんて長い間していなかったから僕はそれだけで嬉しくなる。
「ありがとう!凄く嬉しいし凄く楽しみ!」
「良かった。そんなに喜んでもらえると俺も嬉しい」
嬉しくて抱きついた僕をソファに押し倒しながら今度はニヤッと笑うと覆いかぶさってくる。
「ちょちょっと、大輝」
「言う事は言ったしあんなに可愛いことをしてくれて俺を煽ってくれたんだ。ちゃんと答えてやらないとな?」
「・・・・ここで?」
「1回目はな」
そう言いながらすでに臨戦態勢になっているものを僕にゴリッと押し付けてきて、その感触に僕の身体もあっという間に熱くなる。
「あとでちゃんとベッドでも愛してやるから」
「・・・・判っ・・」
返事を全部言う前に大輝に口を塞がれ彼にしがみつく。
「忙しくしている間もずっと真妃を抱きたかった・・・・今日は遠慮しないからな」
「大輝・・・・こんな高そうなところ、大丈夫なの?」
約束どおり、カフェで待ち合わせをして連れてこられたレストランは高級な佇まいで普段の僕なら近づかないような雰囲気のお店だった。
「気にするな。バイトをしててもあまり使い道が無かったんだ。こういう時に使わないでどうする」
そう言われても大輝にも付き合いがあり、勉強やバイトに支障がない場合は飲み会などにも参加していたし洋服なんかにもこだわる方だから実際のところ、
どれだけかかったのか気にはなる。
「あぁ、それと今夜はここに部屋を取ってるから気にせずに飲んでいいぞ」
「え?それなら僕も半分だすよ」
僕も大輝ほどではないけれどゼミの教授の手伝いなどをしてバイト代は貰っている。だから「半分だす」と言ったのだけどそれは却下される。
「いい。今日は真妃に寂しい思いをさせたお詫びも込めているんだから。それより真妃、今日は特に綺麗だ」
大輝にここに誘われてからの僕は浮足立ってしまい、拓未に「真妃ちゃん、機嫌いいね」と言われつい、今日のことを話してしまった。
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