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季節シリーズ
36.


彼のショックを受けた顔をみて“やっぱり蒼介さん、理由は言ってなかったんだ”と思った。

そして話しながら考えてみた事を言ってみる。

「でもね、少し考えたんだけど石川君に名前で呼ばれても嫌じゃないなって」

「え?」

今度は驚いた様子をみせる彼の頭を思わず撫でながら「本当に表情が豊かだよね〜」と場違いな事を言ってしまう。

そんな僕の手をとり彼はまた表情を変え、今度は嬉しそうな顔をして言った。

「そんなことより俺が“真妃ちゃん”って呼んでも嫌じゃない?」

「自分でも不思議だなって思うけどね。蒼介さんはお兄ちゃんみたいな存在だから自然と名前を呼ばれるようになっても嫌じゃなかったし大輝は
 “俺が嫌な記憶を上書きしてやる”って言われて半ば強引に呼び始めたからいつの間にか定着したって感じなんだ。だから何というか・・・・
 改めて名前を呼んでもいいかと聞かれると変な感じがする」

「でも嫌じゃない」

「うん」

「なら呼んでもいい?」

「石川君が良ければ」

「俺から頼んでるのに良ければって変だよ」

「そうか・・・・そうだね」

「じゃあこれから“真妃ちゃん”って呼ぶ」

「うん、判った。っていうかちゃん付けなの?」

「だって俺からみたら“真妃”っていうより“真妃ちゃん”のほうがしっくりくる」

「・・・・そうなんだ」

今まで誰からも“真妃ちゃん”と呼ばれた事は無い。だからなのか何とも不思議な感覚になる。

「嫌?」

そんな僕の心境を察したかのように彼が聞いてくるのを自然と笑みを浮かべて否定する。

「嫌じゃないよ。ただ不思議なだけ」

「じゃあこれから“真妃ちゃん”って呼ぶ」

さっきと同じ言葉を言って彼はニッコリと笑った。

「俺のことも好きに呼んでよ」

そして“染矢君”が“真妃ちゃん”になり、“石川君”を“拓未”と呼び合うようになった。





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