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季節シリーズ
32.


「真妃は大丈夫か?」

だいぶ身体が楽になってきた頃、ようやく蒼介さんが戻ってきて石川君に問いかける声が聞こえ、僕は閉じていた目を開いた。

「うん。呼吸も顔色も落ち着いてきたみたい。で、あいつは?」

「話はつけておいた」

蒼介さんのその言葉に僕は身体の辛さも一瞬、忘れて“どうやって?”と不思議に思い、起き上がろうとしたけれど彼が続けた言葉に今度は驚く。

「真妃の話を聞いてから調べたんだ。名前は前に聞いてたから後は顔だけだったけど拓未が写メを撮ってくれたので解ったし。
 で、俺の同期にお前と同中の奴がいたからそいつを通じて調べて、あいつを黙らせるだけのネタはあったからそれを使っただけだ」

僕が起き上がるのを支えてくれた石川君に「ありがとう」とお礼を言い、蒼介さんのほうを向いた。

「迷惑をかけてごめんね」

「迷惑とは思っていないが、今日、飯を食いに行く約束をしていて良かったとは思ったな」

「俺も迷惑だなんて思ってないよ」

「でも・・・・倒れかけちゃったし」

「それは今までのストレスが溜まってたせいだろう」

「そうだよ。それより染矢君、この事、桐原にも言った方が」

隣に座った石川君が言う言葉を僕は遮る。

「蒼介さん、石川君。迷惑をかけたのに我儘を言うようだけど・・・・今回の事は大輝には言わないで」

「だけどな、お前、倒れかけたんだぞ?」

「お願い。大輝、バイト先が増えて何だか疲れてるようだし、僕の事で煩わせるのは嫌なんだ」

「でもな・・・・」

「こういう時に助け合うのが恋人じゃないの?」

「いいんだ。大輝の負担になりたくないんだよ・・・・今度は大丈夫。もしまた現れても大丈夫だよ。ちゃんと対処する。お願いします」

隣からジッと見つめられる視線を感じながら僕は頭を下げた。

「蒼介さん、大学ではほとんど俺が一緒だし、しばらくは染矢君の側から離れないようにするよ」

僕は石川君のそんな言葉を聞き慌てて顔をあげた。

「大丈夫だよ」

「いや・・・・そうだな。拓未、悪いが頼めるか?」

「蒼介さんまで何を言うの?石川君にそんな迷惑、かけられるわけないじゃない」

「染矢君、俺、迷惑だなんて思ってないよ?第一、迷惑だと思ったら言わないし」

彼が真剣に言ってくれているのを感じ僕は決心して口を開いた。

「蒼介さん、石川君に僕の事、話して」

「・・・・本当にいいのか?」

「うん。あの話を聞いたら石川君も僕の側にいようとは思わないよ。そうすればこれ以上、石川君を巻き込まなくて済む」

僕のその言葉を聞いた石川君が少し怒ったように言う。

「染矢君、俺の事を見くびらないでよ。何を聞いても俺は染矢君の側にいるよ」





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