季節シリーズ
31.
「え?」
この人は何を言っているのだろう・・・・大輝に会う?大輝に話をする?
そんな事されたら大輝に迷惑がかかる・・・・そう思うと頭が真っ白になった。
「そいつなら俺の話を聞いてくれるんじゃないか」
元彼の言っている事が少しずつ理解でき始める。
「・・・・君の話って?」
「お前の代わりに少し口止め料を貰おうと思ってるだけだ」
「口止め料?」
「お前とのことを周りに知られたくないだろうからな。いい大学に行ってるんだ。知られたくないに決まってる」
断定するような彼の言葉を理解でき始めると口の中が乾いてきて少しずつ呼吸が苦しくなってくる。
「だから口止め料を払えば黙っててやるってな。あいつも自分の身が可愛いだろうしきっと払うさ。あぁ、これを機会にお前とは別れるかもな。
まぁ、お前が俺の話を聞くならあいつには何も言わないが」
「君は・・・・何も変わってないんだ・・・・」
必死で声をだすけれど、その間にもどんどん呼吸が苦しくなってくる。
「俺の知り合いにお前の事を話したら会いたがってさ。お前がそいつの相手をしてくれたら俺にも金が入るんだよ。お前ならそれなりに払うって」
・・・・苦しい・・・・息ができない・・・・
「どうせバージンじゃないんだ。彼氏に俺を会わせたくないなら言う事を聞けよ」
視界が歪むような感覚に襲われ身体が倒れていく。
「蒼介さん!染矢君が!」
いきなり支えられたかと思うと石川君の声が聞こえた。
「真妃!しっかりしろ!」
続いて蒼介さんの声も聞こえる。
「なんだ、お前ら」
「拓未、真妃を車に連れて行け」
「判った。染矢君、歩ける?すぐそこだから頑張って」
石川君に抱えられながら何とか頷き、崩れそうになる足を前に動かす。
「おい!まだ話は終わってないだろ!」
「煩い。お前とは俺が話してやるよ」
蒼介さんがあいつを止める声を後ろに聞きながら角を曲がった所に停めてあった蒼介さんの車の後部席に乗せられた。
「染矢君、大丈夫?水ならあるけど飲む?」
僕を後部席に横たわらせると彼は自分の鞄からペットボトルを取り出し聞いてくれる。
それに僅かに首を横に振り、小声ではあったけど「ありがとう」と言ってからジッとしていると少しずつ呼吸も楽になってきた。
その間、石川君はずっと開けたドアから身を屈めるようにして僕の背中をゆっくり、優しく摩ってくれていた。
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