季節シリーズ
18.
「そっかぁ。じゃあ俺はラッキーだったんだ」
そう言って無邪気な顔で笑う彼につられてクスッと笑うと石川君は急に立ち止まった。
「どうかした?」
「いや〜染矢君、顔のこと、言われるの嫌そうだけど・・笑顔も綺麗だなって思って」
そう言った後、慌てて「ごめん」と謝る彼には何故か不快感はおきなかった。
「不思議なんだけど、石川君に顔のことを言われてもそんなに気にならない」
「ほんと?」
「うん」
「なら良かった〜。でも嫌な事は嫌だってはっきり言って。でないと俺、判らないし不用意な事を言ってせっかく友達になったのに
嫌われたくないし」
そんな事を言ってくれる彼に「判った」と返事をするとまた無邪気な笑顔を見せた。
大輝に石川君の事を話すと複雑そうな顔をした。
「どうしたの?」
「う〜ん。なんだか悔しい」
「変なの。僕が浮気をするとでも思うの?」
「そんなんじゃない。真妃に友達ができて良かったと思う反面、俺の知らないお前をそいつは見れるんだなって思って」
そう言って苦笑いをする大輝に「バカだな」っと言って笑った。
彼とは学部が違うものの必修科目が重なる事が多く、僕を見つける度、駆け寄って話しかけてくれることが続き自然と一緒に
居ることが多くなった。
彼といることで僕も人と接することが多くなり友人とまではいかないが顔見知りが増えていき、中には僕1人の時でも声を
かけてくる人もいた。
そんな日々が続いていたある日、彼と一緒に講義の資料を探しに本屋に行くと蒼介さんがいた。
「おう、真妃。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「久しぶりって、1週間前に会ったばかりじゃないか」
ひと足早く、大輝と同じ私立の名門と呼ばれる大学へ進学した蒼介さんとは以前ほど、頻繁に会う機会は減ったものの、
メールや電話はよくしている。
1週間前も大輝がゼミの飲み会に参加することになったため、蒼介さんと夕食を一緒に食べた。
「ははっ、そうだけど」
そう笑って僕の傍らにいる石川君に目を移す。
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