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季節シリーズ



「桐原。真妃はいきなり恋人に、と言われて戸惑っている。本当に真妃の事が好きならもっとお互いのことを知ってから
 先にすすめるくらいの余裕を持たないといつまで粘ってもいい返事はもらえないぞ」

「・・・・」

僕が蒼介さんの言葉を考えようとしている横で大輝に言い聞かせている。大輝は大輝で言われた言葉を黙って聞いている。

「真妃は俺の可愛い後輩で弟みたいなものだ。その真妃を大事に思ってくれないような奴には任せられない。
 そのことを肝に銘じておけ」

蒼介さんはそう言うと僕に「またな」と声をかけ立ち去ったが、残された大輝と僕は何ともいえない空気の中、立ち尽くしていた。

「あの・・」

僕はいたたまれなくなり大輝にそっと声をかけた。

「染矢。お前、恋愛が怖いのか?」

直球で聞いてくる彼に思わず目を丸くする。

「さっきの・・えっと清水だっけ?あいつが言ってただろ。お前が怖がる気持ちも判るって」

「清水さん、ね。先輩なんだからあいつ呼ばわりはないと思うけど」

口をついて出たのはそんな言葉。

「あ、あぁ。で、どうなんだ?」

「・・・・」

そんな直球の質問に答えられるわけも無く、僕は黙って俯いた。

「ハァ〜、今度はダンマリか・・」

軽く溜息をつく彼に申し訳なさが湧いてきて泣きそうになる。

「そんな顔をさせたいわけじゃないのな・・・ゴメン」

謝罪の言葉を口にする彼に益々、申し訳ない気持ちになりながら首を横に振る。

「お前が何を怖がってるのかは判らないけど、それでも俺はお前の事が好きだ。けど、あの人に言われたことも本当だし・・」
「だから諦めない。余裕はもてないけど焦らないようにするよ」

「桐原・・」

「まずは名前呼びからだな」

名前で呼ばれるのは好きじゃない。僕のために考えてつけられた名前ではないから。

だから彼に言った。

「僕、名前で呼ばれるの好きじゃないんだ」

「なんで?あいつには呼ばせてたじゃないか」

「蒼介さんは・・お兄ちゃんみたいなものだから・・」

憮然とした表情を見せながら言ってくる彼に返すと面白くないという雰囲気を前面に出してきた。

「なら俺は恋人だろ?」

「・・・まだ了承したわけじゃない・・・」

「ハァ〜手強いな」

そう思うなら止めればいいのに。

そんなことを思う一方で“諦めない”と言ってくれる彼を僕は眩しい思いで見つめた。




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