逆転(BL)
心中未遂(ミツナル)

降りしきる雨。紅茶の芳しい香りが部屋に充満し、隣の体温にまどろむ。

「…このまま寝てしまいたいな」

「わかるよ」

右手にある成歩堂の手に、強く握られる。答えるようにそっと、握り返した。

「御剣、」

いつも真っ直ぐな瞳が、黒曜石のような美しさと輝きを持って、私を見る。私はその瞳が好きだ。

「どうした」

「いや、なんでも」

そう言って成歩堂は顔をそらす。仄かに頬が染まっていた。

「成歩堂、」

成歩堂のちょっとした仕草に、いつも私は幸せというものを感じる。空っぽだった心が、少しずつ満たされていくのだ。やがてそれが溢れて、"愛しい"という感情に変化する。

「愛しているよ」

右手を引き寄せて、こめかみに優しく私はキスをした。

『心中未遂』


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