逆転(BL)
ほら、甘い(響王)
「おデコくん、よくそんな甘いものが食べれるね」
甘いものが苦手だという牙琉検事。
今日俺は、依頼、ということで、牙琉検事の家でケーキを頬張っている。どれも宝石のように美しく輝いて美味しそうだ。頂き物らしく、処分に困っていたらしい。
……女の子に配ればいいのに。
「あ、え、だ、大丈夫ですっ!!」
「ほら、クリーム付いてる」
スッと慣れた手つきで口元のクリームを拭い、舐めた。
「ん?どうしたんだい?」
モテるくせにこういうことには鈍感で、女の子がいるのに俺を家に招いたりする。……胸がムカムカする。きっとこれはケーキのせいじゃない。腹いせに、牙琉検事の足(とくに弁慶)を、蹴った。
「…っ!い、いきなり何するんだっ!痛いじゃないかっ!!」
「牙琉検事、ムカつきます」
なめらかなクリームとふわふわのスポンジを、睨み付けながら俺は言った。部屋には、紅茶のいい香りが充満してるが、俺の心はこれでもかっ!!と乱れている。
「えっと、詳しく説明してくれるかな?」
戸惑うように、髪を触りながら、牙琉検事は曖昧に微笑んだ。フォークでクリームだけをすくって、牙琉検事の口元へ差し出した。
…あまりやりたくはないけれど、これで報復できる、と俺は思った。
「……はい、あーん」
今までにこれほどテンションが低く、甘くないあーん、はあっただろうか。
「お、おデコくん、そ、れは?」
「クリームですよ?食べたら、教えます」
首を軽く傾け、微笑んだ王泥喜は機嫌の悪さを隠さずに言い放った。喉を唸らせ、覚悟を決めた牙琉検事は、おずおずとクリームを口にし、紅茶で流し込んだ。
「甘い、ね」
「クリームですから」
しれっと俺は言って、紅茶を飲んだ。ケーキに視線を戻すと、あたりが暗くなって、頬にちゅっと柔らかい感触がした。
「…な、な、」
「ここも、ね」
にこ、と牙琉検事は、嫌みったらしい微笑みを浮かべると、牙琉検事の指先が唇をかすった。その後、耳元に囁かれた言葉で俺は、急激に体温を上げることになる。
「ここはもっと甘いのかな?」
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