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Sakura tree

それからすぐ、Rekiが壱織の弟だと公表された。
同時に悟が二人の兄だという事も公表され、三人の共演も一気に解禁になった。
それはRekiが活動を続ける為に家族が出した条件の代償であり、それも怜を守る為ならむしろありがたい事だった。

Rekiは読み方をそのままに、名前を『怜姫』に改め、真実を偽るのをやめた。
そうしないと続けさせないと、今度は家族が事務所を脅しにかかった効果があって認められたのだが、その代わりが兄弟の公表というわけだ。
だがそれは好都合で、怜が責められた場合、悟と壱織がかばってやれる。
これが自分達がずっと好きだった弟だと言って守ってやれる。

注目されはじめていたRekiのカミングアウトに、しかも悟と壱織が兄弟だという事で雑誌や新聞、テレビなどでも大きく取り上げられ、怜姫の名前は一気に広がった。
取材も殺到し、様々なオファーも舞い込んだ。


真弓はすぐに怜に連絡を寄越し、おめでとうと言って一緒に喜んだ。
店でも女装が復活し、怜を心配していた主人や客達は「怜姫(れいひめ)の復活だ!」と乾杯した。
真弓も遅い時間になって店にやって来て、やはり帰りは怜を家まで送る事になった。

「何か、いつも迷惑をかけてばっかりで……ごめんなさい」
「いいえ、いいんですよ。好きで勝手にやってるんですから。むしろこちらの方が迷惑じゃないかと心配してるくらいです」

変わらない優しい笑顔に、怜は思わず見惚れた。


二人がいい雰囲気で帰ってきたのを、響生は悔しい思いで見ていた。
響生はずっと、怜が帰ってくるのを家の前で待っていたのだ。

「響生…!?」

響生に気づいた怜は当然びっくりしたが、同時に恐くもなった。

「な…っ、どうし……」

言葉にならないほど動揺しているのも構わず、いつも通りカラカラと笑う。

「いやぁ、やっぱり、ちゃんと会って話すべきだったと思って。待ってたんだよ」

メールで告白してダメだったから会いに来たのは百歩譲って理解しよう。
しかし何も言わずに家の前で待ち伏せされていては、正直恐怖感を抱かずにいられない。
その動揺と恐怖を察してか、真弓先生がすかさず前に立ってくれた。

「初めまして」

しかし響生はそれを無視して、迷惑そうな顔で怜に話しかけた。

「怜。誰?」

何て失礼な態度だと、先生に対して申し訳ない気持ちになりながら、慌てて紹介する。

「あの、中学校の先生で……王子の事とか、個人的にも色々相談に乗ってもらってて……。で、響生は中学の同級生です」

怜がじっと目を見て言うと真弓はすぐに察し、ハッとして響生を見た。
真弓にも相談していた、例の同級生だと気づいたのだろう。

「へぇ〜、教師……。先生がこういう人と付き合ってもいいんですかね?大体、怜の事を知らないのにちゃんと相談に乗ってあげられるんですか?俺は昔から知ってるから大丈夫だけど」
「あ、え?待って……何か勘違いして」
「どうせ怜が芸能人になったから近寄ってきたクチでしょ?有名になると急に親戚増えるって言うしさ!」

響生の誤解を解こうとしても、響生は怜の言葉を耳にも入れず真弓に突っかかっていく。
真弓も黙ってはいなかったが、それは決して自分の事ではなかった。

「それは、怜さんに失礼じゃないですか?」

相手を責め立てる様な、強く厳しい口調だ。

「それに、こんな夜遅くに自宅の前で騒ぎ立てて、迷惑だとは思わないんですか。それと、僕と怜さんはお付き合いしてるわけじゃありません」

ムッとしていた響生は、最後の一言を聞いてニヤリと笑った。

「ならアンタだって立場は同じじゃないですか。怜の前だからって偉そうにかっこつけてさ。アンタこそ迷惑でしょ。彼氏ヅラすんなって」

ショックを受けたのは、真弓よりも怜だった。

「何でこうなるの……?」

まさか響生が真弓先生にこんな酷い事を言うなんて。
先生は本当に親切にしてくれて、支えになってくれている人なのに。

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